ソウル市九老(クロ)区にある損害保険会社のコールセンターと同じビルで働く人々の中で、109人の新型コロナウイルス感染者が出た。こうした事態を受け、ソウル市では同ビルを「感染病特別支援区域」に指定し、追加感染を防いでいる。
13日、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は同区の保健所を訪れ行った会見で、「これ以上、この区域での感染が起きないように、感染防止に総力を挙げている」としながら、該当するビルに住む人たちだけでなく、ビルを訪問した人々に対する調査・検査を行うことを明かし、協力を呼びかけた。
朴市長はまた、「現場の意見を集めた結果、民間のコールセンターの勤務環境が集団感染に弱いだけでなく、従事している人々の労働権がとても劣悪であるという事実を確認した。民間コールセンター産業は、大企業や保険会社から委託・下請けを受け運営する構造になっており、下請け会社が受ける業績への圧迫が、そのまま労働者に覆い被さるしかない劣悪な構造だ」と見解を述べた。
韓国メディアでは実際に、窓がない上に隣席と近いなどといったコールセンターに共通する環境が、集団感染を後押ししたと伝えている。韓国の市民団体『職場パワハラ』がコールセンターで働く1565人を対象に行った緊急アンケートでは、85.6%が「自身の職場が新型コロナウイルスから安全ではない」と感じているとし、97.8%が「狭い業務空間が感染の危険性を高めている」と答えた。

朴市長はさらに、「災難は最も弱い階層から先に押し寄せるという言葉がある。今まさに『新天地』教や九老コールセンターの場合がそれに該当する。災難は弱い人々を先に攻撃し、結局は社会全体を弱くする。このため、中長期的な観点から対策を立てなければならない」と続けた。
対策としては「密集度の緩和のための在宅勤務(テレワーク)、柔軟勤務制などを積極的に勧め、そのための支援も最大限に行う。また、疑わしい症状があっても休暇を取れないなどといった労働人権的な側面から問題が摘発される場合には、労働部との合同点検などを通じ、積極的な措置を取る」といった点を挙げた。
一方、朴市長は「コールセンターの集団感染は、密集した作業空間で働く低賃金と非正規雇用の主に女性労働者の中で起きた。こうした環境はコールセンターだけではなく、信用調査会社や零細放送・映像・編集会社、デザイン外注業者などの密室作業を行う労働者や、大規模な構内食堂の調理・配食などを行う人もそうだ。密集した休憩室を使う労働者の作業環境と安全に目を向けるべきだ」と主張した。
その上で、「これからは先制的な点検だけでなく、長期的にも労働環境の改善に対する対策を立てていく」と述べた。その理由として「感染症のような災難は、これからいつでも私たちに押し寄せるだろうし、そうした時に私たちは同じ状況でやられてはいけないから」と語った。