「不平等、ジェンダー、安全、政治改革、平和」 韓国で総選挙控え、市民ネットワークが始動
「不平等、ジェンダー、安全、政治改革、平和」 韓国で総選挙控え、市民ネットワークが始動
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2020.03.14 08:08
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4月15日の総選挙を前に、韓国の有力市民団体が集まりネットワークを結成すると共に、主要な議題を発表した。

「怒ろう、参加しよう、希望しよう」

3月12日、ソウル市内に集まり会見を開いた人々の手にはこう書かれたプラカードが握られていた。韓国では4月15日に総選挙が行われる。国会議員300人がすべて入れ替わる今回の選挙は、投票日まで一か月を切っているのにもかかわらず、1月下旬から新型コロナウイルスの拡散で韓国内が大騒ぎとなっているため、なかなか波に乗りきれない印象だ。

そんな中、韓国の主要市民団体が一堂に会し、「2020総選挙市民ネットワーク(以下、2020総選ネット)」を共に、政治家たちに今回の選挙における争点を突きつけた。同ネットワークにおける中心団体の一つ、『参与連帯』のホームページにはこう書かれている。

(ソウル=聯合ニュース)12日、ソウル市内で発足記者会見を行った「2020総選挙市民ネットワーク」。
(ソウル=聯合ニュース)12日、ソウル市内で発足記者会見を行った「2020総選挙市民ネットワーク」。

「総選挙が一か月後に迫ってきたが、政策と公約は完全に失踪している状態だ。新しい選挙制度を悪用する偽装政党が出現する一方で、市民の生活とは関係ない政治家たちの離合集散だけが騒がしい。市民の生活を変える政策を約束し、正々堂々と選挙に臨む姿を期待できないのが、現在の私たちの政治の現実です」

12日の記者会見で「2020総選ネット」は、総選挙における主要な議題5つを発表した。同様に『参与連帯』のホームページより引用してみる。

(1)不公正・不平等の打破(不動産など資産、住居、労働、経済民主化、財閥改革、青年、青少年)
(2)ジェンダー差別・嫌悪の根絶
(3)気候危機SOS、皆が安全な社会(気候危機、エネルギー、4.16セウォル号惨事、産業災害、医療)
(4)政治・権力機関の改革(衛星政党、選挙法改定、はたらく国会、検察・警察改革)
(5)市民が作る平和(南北関係、米韓同盟、非核化)


前掲のホームページは、「2020総選ネット』の活動をオンラインを中心に行うとしている。そしてその際の活動基準として、「各政党の政策を評価し、果敢な政策転換を要求し、総選挙の候補者たちが問題解決に適した人物であるのか、関連情報を有権者に提供する」と説明する。

同ネットには参与連帯をはじめ、経済正義実践市民連合、全国民主労働組合連盟(民主労総)、韓国女性団体連合、環境運動連合など韓国の代表的な26の市民団体およびネットワークが名を連ねている。今後、オンライン上で週2回のブリーフィングを行うとしている。

以下は会見の際に発表された宣言文。全訳は筆者。

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怒ろう、参加しよう、希望しよう

奈落の底に落ちた韓国政治、絶望の政治に怒る

コロナ19(新型コロナウイルス)という新たな感染病が韓国社会を覆っている中で、第21代総選挙がひと月あまり先に迫ってきた。しかし、国民を安心させる政治はない。政党間の政策競争も探すことができない。市民の生活と遠く離れた議席数あそびと政治家たちの離合集散があるだけだ。国民に希望を与える政治が無くなって久しい。

朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾した第20代国会(2016年4月〜2020年4月)は、逆説的にもなぜ国会と政治が根本的に変わらなければならないかを赤裸々に示した。命をかけるとした国会は、口では市民の生活をうたったが、事あるごとにボイコットを乱発し、ついには「動物国会(編注:議員が動物のように争う様を例えた言葉)」まで演出した。

そんな国会は切迫した国民の願いや、抜本的な改革の要求を入れる器としてふさわしくない。民心に従って議席を分け、多様な勢力の国会進出のために私たち全てが努力した選挙制の改革が一部は実現されたが、今わたしたちは衛星政党の存在という惨憺たる現実を前にしている。現実政治という名前で、憲法と民主主義が籠絡されており、有権者たち侮辱されている。私たちは決してこの状態で次の国会を迎えることはできない。

絶望の政治を前に落ち込んでばかりいられない

この怒りと絶望を変えることは、結局は有権者にかかっている。有権者たちは政治家たちと政党による軽薄な計算に乗せられて動く、将棋の「歩」ではない。選挙の最終審判者は有権者たちだ。そのためにも、私たちはみな、賢い有権者にならなければならない。

選挙法の穴を悪用し「政党のフリ」をする衛星政党を断固として無視しなければならない。選挙が迫るときらびやかな政策公約を掲げては、こっそりと無かったことにする政治、恐怖と嫌悪を助長し、レッテル貼りや地域主義を動員する古い政治、共生よりも排除し少数の利益だけに服務する特恵政治、現在の困難を克服し迫り来る未来を準備するよりも、過去に退行する政治を冷静に審判しなければならない。

絶望を希望に変えるには有権者が参加するしかない。コロナ19により作られた政局にもかかわらず、総選挙をひと月あまり先に控え市民社会団体が「2020総選挙市民ネットワーク」を構成する理由だ。「2020総選挙市民ネットワーク」は失踪した政策を取り戻し、当面の社会的な課題を提起し、有権者の権利を代弁する活動を展開していく。

私たちの参加で希望の道を作ろう

「2020総選挙市民ネットワーク」は、韓国社会が目の前に直面している数多くの問題のんかで、以下の5つの議題に注目し、こうした問題に対する各政党の立場と解決方案の提示を要求する。

一つ、諸政党は固着かした不平等・不公正問題をこれ以上放置してはならない。

この問題は財閥中心の経済構造、とてもひどい資産の不平等とこれによる住居の不安、既得権をめぐる世帯間の葛藤と老々葛藤として現れている。しかし、財閥改革と経済民主化は忘れられ、資産に対する課税は依然として足りない。労働の権利は持続的に無視されてきたし、青年と青少年は強固な既得権構造の中で排除されてばかりいる。

解決策はすでに出ている。不動産による不労所得を徹底的に環収し(取り戻し)、借主の保護、住居福祉など、住居に対する権利を保障する立法を実現することだ。財閥への経済力の集中、皇帝経営、不公正な高位を根絶する一方、女性、青年、非正規雇用が多数でアイル5人以下の企業にも勤労基準法を適用し、特殊雇用労働者にも労働基本権を保障する「全泰壱(チョン・テイル)法」の改定をすべきだ。これを含め、諸政党は不公正と不平等の問題をどう打破するのか、解決策を出すべきだ。

二つ、韓国社会に蔓延するジェンダー差別と暴力、少数者への嫌悪をかならず根絶すべきだ。

過去数年間におよぶ女性たちの叫びにもかかわらず、依然としてオンライン上での女性に対する嫌悪と暴力は絶え間なく続いている。労働時間の男女差別、子育て労働による雇用断絶と、性別による賃金格差が女性の生活を脅かしてもいる。

男性が独占する政治構造の中で、女性の政治参加もまた劣悪な状況にある。障がい者、移住者、難民、性的少数者など、社会的な少数者に対する排除と嫌悪もまた深刻だ。これに対し「包括的差別禁止法」の制定をはじめ、日常生活や職場・政治の領域で多様なアイデンティティが他人を判断する基準や嫌悪の対象にならず、性別による暴力と差別が容認されないようにするための政治と立法活動が行われなければならない。

三つ、気候危機をはじめとする社会的な災難から安全な社会を作ることは、これ以上先送りすることができない現実の問題だ。

豪州での山火事が示すように、気候危機は明日のさらなる災難としてやってくる。炭素減縮のために石炭発電所を閉鎖し、一日も早く内燃機関車の生産を中断し、原子力発電の実質的な減縮と安全確保など、「脱核と脱炭素社会経済への果敢な転換」を推進するべきだ。

「セウォル号惨事」と「加湿器惨事」のように、国家が国民の安全に対する責務を放棄することが再び起きないように、徹底した真相究明と責任者への処罰をこれ以上先送りにしてはならない。こうした警戒心はコロナ19感染症のような災難に対処し、社会的に克服するための方案を作ることにつながるべきだ。

公共医療への支援確保やインフラの構築のように、公共性を拡大させることはもちろんのこと、災難手当のように災難に脆弱な者たちのために、社会のセーフティネットを綿密に編むことが要求される。政府はもちろん、諸政党もより迅速によえい果敢に行動するべきだ。

四つ、国会と政治を根本からバッサリと全て変えよう。

ひょっとすると最も必要であるが、有権者が行動しない限りは最も遠く感じられる事でもある。国民を代議するという目的も、計画もない衛星政党は、国民を馬鹿にしない限り生まれることはなかった政党だ。衛星政党を画策する勢力と、国民の上に君臨する政治屋たちを審判しなければならない。

衛星政党が出現しないように、民心がそのまま議席に反映され多様な政治勢力が国会に進出できるように、選挙法を改定しなければならない。諸政党みずから国民のためにはたらく国会、透明に運営される国会を作る方案を提示しなければならない。有権者の意思表現を制約する選挙法も変えなければならない。国会が正常に作動するば、検察と警察、国家情報院などの権力機関の改革と民主的な統制も可能になる。

五つ、朝鮮半島に新たな平和の時代を作ることもやはい、私たちにかかっている。

2年前、文在寅政府の果敢な動きは米朝交渉を導き、板門店宣言と南北軍事合意などの成果を挙げた。しかし同時に、長い敵対と不信の構造に閉じ込められたまま、さらに不平等な米韓関係を調整できなければ、核のない朝鮮半島を作る課程も、米朝と南北間の関係改善も難しいということが確認できた。朝鮮半島の状況を変更するためには、必ず突破するべき問題だ。

開城工業団地と金剛山の観光再開をはじめに、南北交流と協力の領域を広げ、軍事合意も履行すべきだ。対中国封鎖のための米国による軍事行動に参加すべきではなく、話にならな(在韓米軍の)駐屯費用の強要も断固として拒否しなければならない。朝鮮戦争の勃発から70年、戦争を終えて平和の時代を開こうとするならば、政府はもちろん政党も共に参加するべきだ。そうしてこそ、朝鮮半島の新たな春を再び夢見ることができる。

「2020総選挙市民ネットワーク」はこうした問題を中心に、各政党の政策を評価していく。果敢な政策転換を要求し、総選挙の候補者たちがこうした問題解決にふさわしい人物なのか、関連する情報を有権者たちに提供するオンライン行動を展開していく。ひと月はとても短い時間であるが、有権者たちが政党と候補者を評価するには十分な時間でもある。

2020年3月12日 2020総選挙市民ネットワーク

3月12日、記者会見を行った「2020総選挙市民ネットワーク」。写真は5つの議題が映えるように同ネット側が加工したもの。参与連帯提供。
3月12日、記者会見を行った「2020総選挙市民ネットワーク」。写真は5つの議題が映えるように同ネット側が加工したもの。参与連帯提供。

 

 


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