インターネットのメッセンジャー「テレグラム」上で未成年者の性的搾取物を制作・流布し、1億ウォン以上を稼いだ、通称、「博士の部屋」運営者による犯行の実態が明らかになった。
「テレグラム」とは、ロシアの企業が作ったメッセージや写真・動画をやり取りするアプリで、韓国企業のものよりも、匿名性・保安性が高く、メディアなど様々な所で使われている。「博士の部屋」は、テレグラム上に開設された匿名のチャットルームを指す。
20日、ソウル地方警察庁サイバー安全課によると、2018年12月から今月まで、20代のチョ某氏の犯行による被害者は、確認できただけでも未成年者16名を含む74人にのぼる。
チョ氏は被害者たちを「奴隷」と呼んで、動画を「博士の部屋」を通じ販売していた。
チョ氏は「博士の部屋」を3段階に分け運営していた。1段階は20〜25万ウォン(17,500円〜22,000円)、2段階は70万ウォン(約62,000円)、3段階は150万ウォン(132,000円)ほどの仮想通貨を「後援金」の名目で受け取っていた。

被害者の全容はまだ明らかになっていない。警察関係者は「被害者が多いと推定されるが、私たちが証拠を収集した人物がこの人数」と述べていると聯合ニュースは伝えている。
警察の発表によると、チョ氏はアルバイトなどをもちかける形で、被害者たちを誘い、顔が写った裸の写真などを送らせたあと、これを脅しの道具として活用した。
チョ氏は被害者たちに性的な画像・映像を撮影するよう脅迫し、そうして得られた性的搾取物を「テレグラム」に開設した「博士の部屋」を通じ、流布させた。
19日、逮捕されたチョ氏には児童・青少年の性保護に関する法律違反(児童わいせつ物制作)、刑法上強制わいせつ・脅迫・強要・詐欺、個人情報保護法違反(個人情報提供)、性暴力処罰法違反(カメラなどを利用した撮影)の嫌疑が適用されている。
チョ氏また、区庁や洞事務所(町役場)ではたらく社会服務要員(兵役義務の一環としてはたらく男性)たちにアルバイトをもちかけ、彼らを通じ被害女性と「博士の部屋」の有料会員の個人情報を抜き出し、これを脅迫と強要に用いもした。
さらに、被害女性を脅迫し、性的搾取物を流布させるなどの犯罪に加担させたことが分かっている。チョ氏はまた、「博士の部屋」に積極的に同調する会員たちを「職員」と呼びながら、組織的に犯罪に加担させていたと警察は説明している。
共犯者には資金洗浄、性的搾取物の流布、チャットルームの運営などを任せ、あげくの果てには被害者に性暴行を加えさせもした。
また、有料なチャットルームに人々をおびき寄せるため、誰でも「サンプル映像」を見られるチャットルームを別途で運営する周到ぶりを見せていた。警察は「博士の部屋」の参加者が1万人台にのぼると見ているという。
警察はチョ氏の共犯者13人を検挙し、その内4人の身柄を拘束したまま検察に送致した。残る9人については捜査中だ。被害者たちの年齢は平均24〜25歳程度で、未成年者も多数含まれている。
チョ氏はテレグラムだけで犯罪を指示し、人々と一切接触しないまま用意周到に「博士の部屋」を運営してきたと警察は明かしている。

昨年9月、捜査に着手した警察は、数十度におよぶ強制捜査、CCTV(監視カメラ)の分析、国際協調捜査、仮想通貨の追跡などを通じ、チョ氏の身元を特定し、今月16日に逮捕した。
チョ氏は逮捕直後、自身を「博士ではない」として、留置場で自傷行為を行うなどしたが、現在は犯行を認めているという。また、チョ氏は銃器や麻薬を販売すると人々をだまし、お金を騙し取るなど詐欺も行っていた事が分かっている。
警察はチョ氏が犯罪により得た収益を追跡し、起訴前に没収・保全を申請し、すべての収益金を国税庁に通報する計画だ。警察はすでに、チョ氏の住居から現金約1億3千万ウォン(約1140万円)を押収している。
また、「博士の部屋」の有料会員も追跡し、検挙する方針だという。警察は『『博士の部屋』で取得した性的搾取物を流布したり、所持している会員たちを必ず検挙し、強力に処罰する予定」と明かした。
韓国ではこうしたチャットルームを用いた同様の事件が頻発している。中でも2019年に『ハンギョレ』などが取材した似たような構図の「n番部屋」事件は、大きな話題となった。