「加担者、幇助者まで検挙」...韓国政府が性搾取チャット厳罰求む500万人署名に回答
「加担者、幇助者まで検挙」...韓国政府が性搾取チャット厳罰求む500万人署名に回答
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2020.03.25 10:00
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韓国で今、最も高い注目を集めている「n番部屋」、「博士の部屋」といったチャットルームで、数万の会員が猟奇的な性搾取映像をやり取りしていた事件。関係者の厳罰と身元情報公開を求める署名に、延べ500万人が集まったことを受け、政府が回答した。

「博士の部屋」、「n番部屋」は連日トップニュース

「テレグラム」という匿名性・保安性の高いメッセンジャーを使い、「入場料」を仮想通貨で支払わせるなど周到な手立てで1万人以上の有料会員が正視に耐えない性搾取映像をダウンロード購入していた「博士の部屋」事件。

今月16日の運営者逮捕を受け青瓦台(大統領府)の国民請願ホームページには、運営者だけでなく利用者の身元情報公開を求める署名が5つ以上あらわれ、24日までその署名人総数は500万を超えた。

リアルタイムで女性への性暴力を行っていた「博士の部屋」や、やはりテレグラムを用い性搾取映像をやり取りしていた「n番部屋」などの類似事件が一挙に世間に明らかになり、社会的な関心の高さは圧倒的だ。

23日には文在寅大統領が一連の事件に言及し、「警察は『n番部屋』運営者などに調査を限るべきでない」と異例の注文を行っている。

また、24日にはソウル警察庁が「悪質」を理由に、殺人犯以外では初めて「博士の部屋」運営者チョ・ジュビン氏の名前、年齢、顔写真を公開した。

なお、国民請願は20万人以上がひと月以内に署名した場合、政府の回答が行われる。ほとんどの場合、署名期限を過ぎてからの回答になるが、今回は過去最高の署名数と社会の関心の高さもあり、わずか数日という異例の早さでの回答となった。

ソウル警察庁が公開した、「博士の部屋」チョ・ジュビン氏の顔写真。同警察庁資料より。
ソウル警察庁が公開した、「博士の部屋」チョ・ジュビン氏の顔写真。同警察庁資料より。

警察庁長官と女性家族部長官が回答

今回、録画映像で署名に回答したのは、警察トップの閔鉀龍(ミン・ガプリョン)警察庁長(警察庁長官)だ。

閔長官は「国民の平穏な生活を守るべき警察庁長として、国民の皆さんの憂慮と怒りに全的に共感し、責任を痛感する」、「私たちの社会でこれ以上、デジタル性犯罪が足の踏み場もなくなるよう強力に取り除く」と決意を述べた。

また、「検挙された運営者チョ・ジュビンだけでなく『博士の部屋』の助力者、映像制作者、性搾取映像を所持・流布した者など加担者全員に対しても、警察として可能な全ての力量を投入し、徹底して捜査する」と捜査への意志を示すと共に、デジタル性犯罪を専門とする「デジタル性犯罪特別捜査本部」を即時設置し、運営すると明かした。

なお、世間の関心となっている数万人とされる「利用者全員の身元情報公開」についての言及は無かった。

続いて女性と青少年などの政策を担当する李貞玉(イ・ジョンオク)女性家族部長官が回答した。

李長官は「デジタル性犯罪は女性だけの問題ではなく、安全な私たちの社会のための全員の問題であるという認識を共有している」と、政府の立場を明かすと共に「女性家族部と法務部、科学技術情報通信部、警察庁、放送通信委員会、教育部、大検察庁などの『デジタル性犯罪対応体系』を強化する」と対応の骨子を発表した。

さらに今後、「第2次デジタル性犯罪総合対策」を早急に樹立するとしながら、▲デジタル性犯罪の量刑基準を作る、▲デジタル性犯罪に対する法律改定を支援する、▲デジタル性犯罪モニタリング体系を作る、▲デジタル性犯罪への社会の認識を改善する、▲被害者の支援を強化するという五つの内容を具体的に説明した。

また、「被害者に対する非難と、被害映像物の共有をすぐに止めてほしい。児童青少年利用わいせつ物は所持するだけで犯罪となり処罰を受ける。誰であろうと被害者になり得るという危機意識を持って、認識の改善と犯罪の遮断を共にしてくれることをお願いする」と市民の協力を訴えた。

以下は回答全文。翻訳は本誌が行った。

韓国政府の「n番部屋」、「博士の部屋」関連署名への回答全文訳

▲閔鉀龍(ミン・ガプリョン)警察庁長(警察庁長官):こんにちは。警察庁長のミン・ガプリョンです。テレグラム「n番部屋」と関連した国民請願5件について回答します。

24日、動画で署名に回答する閔鉀龍(ミン・ガプリョン)警察庁長(警察庁長官)。青瓦台HPをキャプチャ。
24日、動画で署名に回答する閔鉀龍(ミン・ガプリョン)警察庁長(警察庁長官)。青瓦台HPをキャプチャ。

請願人たちは「博士の部屋」の運営者、参加者に対する厳正な捜査と身元情報公開を要請しました。これに500万人を超える国民が同意され、性搾取物の流布など、デジタル性犯罪に対する深い憂慮と共に、政府の厳正な対応を促しました。請願人がおっしゃったように、「博士の部屋」事件は、児童・青少年と女性の人生を丸々奪い取る残忍で衝撃的な犯罪です。

私は国民の平穏な生活を守るべき警察庁長として、国民の皆さんの憂慮と怒りに全的に共感し、責任を痛感します。被害者のみなさんに心から慰労の言葉をおかけします。厳正な捜査を通じ、デジタル性犯罪に無感覚な社会の認識を完全に取り替え、私たちの社会でこれ以上、デジタル性犯罪が足の踏み場もなくなるよう強力に取り除きます。

「博士の部屋」運営者のチョ・ジュビン(24歳)について今日、ソウル地方警察庁では身元情報公開委員会を開催し、「性暴力犯罪の処罰などに関する特例法」に基づき、姓名と年齢、顔写真を公開しました。

国民の「知る権利」の保障、被疑者の再犯防止、犯罪予防効果など公共の利益を総合的に考慮したもので、今後、検察送致時に現在の顔も公開する予定です。

国民の皆さん、児童・青少年、女性などの性搾取・性犯罪映像を共有し助長したことは、深刻な犯罪行為です。検挙された運営者チョ・ジュビンだけでなく、「博士の部屋」の助力者、映像制作者、性搾取映像を所持・流布した者など加担者全員に対しても、警察として可能な全ての力量を投入し、徹底して捜査します。

今後、捜査が終結したら、関連する手続きと規定にしたがって、国民たちの要求に外れないように不法行為者を厳正に司法処理し、身元情報公開も検討するなど断固とした措置を行っていきます。

警察は今回の「n番部屋」捜査を契機に、私たちの社会に蔓延しているデジタル性犯罪に対し、体系的で総合的に対応するための警察庁サイバー安全局長を本部長とする「デジタル性犯罪特別捜査本部」を即時設置し、運営します。

特別捜査本部は捜査の実行、捜査の指導・支援、国際協調、デジタルフォレンジック(データ分析)、被害者の保護、捜査官の性認知教育を担当する部署で構成され、関連機関・団体と緊密な協業体系も構築していきます。

まず、6月末まで予定された「サイバー性暴力4大流通網特別取締り」を年末まで延長し、警察のすべての捜査力量を投入し、集中的に取り締まります。

また、これ以上海外のサーバーなどの理由で捜査が困難だということにならないよう、インターポール、米国連邦捜査局(FBI)、国土安保捜査局(HSI)、英国の国家犯罪捜査庁(NSA)など、外国の捜査機関はもちろんのこと、グーグル・ツイッター・フェイスブックなどグローバルIT企業との国際協調も一層強化していきます。

特に取締りを通じ探し出した犯罪収益は、起訴前に没収保全制度を活用し没収するようにした上で、国税庁に通報し税務調査も行われるようにするなど、犯罪の企図を源泉的に遮断します。

取締りと捜査力量を大幅に強化するために、全国の地方警察庁の「サイバー性暴力専担捜査チーム」の人数を拡充し、警察庁のサイバー捜査課に設置された「追跡捜査支援T/F(タスクフォース)」に最高の専門捜査官を配置することに加え、ダークウェブ・仮想通貨追跡技術のような専門捜査技法を積極的に開発するなど、捜査の専門性を画期的に高めていきます。

また、「不法撮影物追跡システム」など、警察が自主開発した国内システムをより高度化させます。

インターポールの「児童性的搾取物データベース」など、国際的な協力システムも積極活用し、不法コンテンツをリアルタイムでモニタリングし、迅速に削除・遮断と捜査をしていきます。特に、モニタリングを通じ確認された被害事実を被害者に即時に知らせ、別の被害が発生しないよう先制的に対応していきます。

デジタル性犯罪は人間の魂を破壊するだけでなく、社会の共同体までも脅かす重大な犯罪です。私は警察庁長としての重い責任を感じ、このような悪質な犯罪行為を完全に根絶やしにする覚悟で、可能な全ての手段を求め、生産者・流布者はもちろん、加担・幇助した者も最後まで追跡・検挙することをもう一度約束します。ありがとうございます。

▲李貞玉(イ・ジョンオク)女性家族部長官:こんにちは。女性家族部長官、イ・ジョンオクです。テレグラムによるデジタル性犯罪に関する汎政府の対応方案についてお答えします。

やはり署名に回答する李貞玉(イ・ジョンオク)女性家族部長官。
やはり署名に回答する李貞玉(イ・ジョンオク)女性家族部長官。

まず、今回の事件により計り知れない傷を負った被害者たちの苦痛に、深い慰労の言葉をおかけします。こんな社会で子供を育てることができるかという請願人の質問の前に、重い責任を感じます。

政府は、デジタル性犯罪は女性だけの問題ではなく、安全な私たちの社会のための全員の問題であるという認識を共有しています。関係する部署が協力し、厳重に対処するでしょう。

政府は2017年から汎政府共同デジタル性犯罪被害防止総合対策を立てました。デジタル性犯罪に対応する組織を新設し、性暴力処罰法など6つの法律を改定するど制度を整備してきました。

しかし、情報通信技術の発達により、新たな累計のデジタル性犯罪が登場しており、迅速な追加の対応が必要な状況です。

これに対し、女性家族部と法務部、科学技術情報通信部、警察庁、放送通信委員会、教育部、大検察庁などの「デジタル性犯罪対応体系」を強化します。今後、部署にまたがる協議を通じ、以下のような方向で「第2次デジタル性犯罪総合対策」を早急に樹立、発表します。

一つ、国民の法感情に合ったデジタル性犯罪の量刑基準を作ります。女性家族部は児童・青少年利用わいせつ物犯罪、カメラなどを利用した撮影罪、通信媒体利用わいせつ罪など、デジタル性犯罪の量刑基準を要請しており、大法院(最高裁判所)の量刑委員会もこれを受け入れ、デジタル性犯罪の量刑基準を早いうちに作ることを決めました。量刑基準が作られれば、処罰する水位の予測が可能になり、該当する犯罪を予防することはもちろん、警察による捜査、起訴、処罰が強化されるでしょう。

二つ、デジタル性犯罪に対する法律改定を支援します。特に児童・青少年を対象とするデジタル性犯罪はより厳重に地対応します。不法撮影物を流布・脅迫行為、児童・青少年に対するオンライングルーミング(飼いならし)行為に対する処罰の根拠を作ります。性搾取物映像の所持、制作、配布、販売に対する処罰を強化します。こうした法律が早急に制定、改定されるよう積極的に支援します。

国会でもデジタル性犯罪の根絶のための強力な意志を表明しています。児童・青少年を対象とする犯罪を無寛容の原則の下に処罰するよう改善していきます。

三つ、警察庁と強力し、デジタル性犯罪のモニタリング体系を構築します。特に児童・青少年利用わいせつ物の流布者に対し、警察捜査を依頼し、児童・青少年利用わいせつ物犯罪の申告時に報奨金を支給するなど、社会的な監視を強化します。

四つ、デジタル性犯罪に対する認識を改善します。児童青少年利用わいせつ物は「所持」するだけでも犯罪となり処罰されるという社会的な警覚心(関心)を高めていきます。小中高の各級学校で、学生たちにデジタル性犯罪の深刻性を知らせ被害を予防し、加害および被害事実を申告することや相談を受けるよう誘導します。

五つ、被害者に対する支援は即時に強化します。テレグラム「n番部屋」事件など、デジタル性犯罪の被害者は違法営造物の流布などで永遠に苦痛を受ける可能性があります。デジタル性犯罪被害者支援センターの被害申告窓口を24時間運営します。

被害者および両親、家族に対する心理治療を支援し、性暴力被害の相談所を中心に、被害者を担当するカウンセラーを1対1でマッチングし、被害から回復できるよう最後まで支援します。

デジタル性犯罪専門弁護士団による「法律支援団」を構成し、捜査の初期から訴訟の最後の段階まで、それに見合った法律支援を提供します。

被害者の皆さんは、怖がらずに申告し、助けを要請してください。不法営造物が削除され処罰が行われるまで、政府が皆さんのそばにいます。

最後にお願いします。2次被害が発生しないように、被害者に対する非難と、被害映像物の共有をすぐに止めてください。児童青少年利用わいせつ物は所持するだけで犯罪となり処罰を受けます。誰であろうと被害者になり得るという危機意識を持って、認識の改善と犯罪の遮断を共にしてくれることをお願いします。

政府はデジタル性犯罪からの児童・青少年の安全と人権保護を最優先にし、必要なあらゆる手段を講究しデジタル性犯罪を根絶します。もう一度、デジタル性犯罪に苦痛を受ける被害者に深い慰労をお伝えします。以上で回答を終わります。ありがとうございます。


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