[全訳]第75回国連総会基調演説(文在寅、2020年9月22日)
[全訳]第75回国連総会基調演説(文在寅、2020年9月22日)
  • The New Stance編集部
  • 承認 2020.09.23 12:15
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韓国の文在寅大統領は22日(現地時間)、ニューヨークの国連本部で開催されている国連総会の演説を行った。文大統領は演説でコロナ禍の下、国際社会の包容性の強化を訴えると共に、「東北アジア防疫・保健協力体」や朝鮮戦争の「終戦宣言」を提案した。
22日(現地時間)、国連総会でオンライン演説(事前録画)を行う韓国の文在寅大統領。韓国政府テレビをキャプチャ。
22日(現地時間)、国連総会でオンライン演説(事前録画)を行う韓国の文在寅大統領。韓国政府テレビをキャプチャ。

●「誰も疎外しない」包容性

今年の国連総会は新型コロナウイルス感染症のため、最小の範囲で開催されている。文大統領の演説も事前に録画したものを再生する形で行われた。

16分にわたる演説のテーマは今後の国連は、「包容性を強化した国際協力」を行うべきというもの。

文大統領は新型コロナウイルスが全世界に拡散する中、これを克服する過程で「誰も疎外せず、共に自由を享受し、繁栄すること」を目指すとし、具体的には「自国の中では不平等を解消し、隣人と共に私の安全と持続可能な発展を保障すること」と共に、「国際的には共同繁栄のために近隣諸国の立場と状況を考慮して協力するもの」と打ち出した。

さらに何よりも重要なのは「人類の生命と安全」であるとし、国連が掲げる「包容的多者主義」は、「全ての国にコロナワクチンを普及できるかどうか」が試金石となると述べた。そして韓国の役割を、「先進国と開発途上国をつなぐ架け橋」と位置づけ気候変動など地球レベルの問題において、国際的な連携の一端を担う姿勢を見せた。

文大統領はまた、朝鮮半島の平和にも触れた。南北は「生命共同体」であるとし、これを克服するためには協力が必要とする一方、「一国の平和、一人の生命を守るために国境を越えた協力」を呼びかけた。

そしてこの立場から、「北朝鮮を含め中国と日本、モンゴル、韓国がともに参加する『東北アジア防疫・保健協力体』を提案する」とした。

この共同体の未来像とその役割については、「多くの国が共に生命を守り、安全を保障する協力体は北朝鮮が国際社会との多者的協力により安全保障を保障される土台となる」とのビジョンの明かした。

文大統領はその上で、朝鮮半島の「終戦宣言」を提案し、これによって朝鮮半島、北東アジア、そいて世界が「和解と繁栄の時代に前進できるよう、国連と国際社会も力を合わせてくれることを願う」とした。

※「終戦宣言」とは、朝鮮戦争(1950〜53)の終結を公にする宣言であり、休戦状態から平和体制に移行するための「平和協定」とは異なる。韓国政府はこれを朝鮮半島平和体制への移行に向けた第一歩と位置づけ、2018年から実現を模索している。以下の記事を参考されたい。

朝鮮戦争「終戦宣言」の年内実現なるか…カギはやはり文在寅
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180831-00095174/

●[全訳]第75回国連総会基調演説(文在寅大統領、20年9月22日)

“包容性を強化した国際協力:’皆のための自由’”

議長さま、
事務総長と各国代表の皆さん、

人類は今まで数多くの危機を克服し
今日の文明を築きました。
今はコロナの危機の中にありますが、
人類は今日とは異なる明日へと、
再び驚きの発展を成し遂げるでしょう。

「コロナ19」により犠牲となった方や遺家族、
病魔と闘っている全世界のすべての方々に
真心から慰労の言葉を伝えます。
人類の健康を守るため献身している
各国の医療陣と防疫要員、国際機構の関係者の方々にも
感謝の言葉を捧げます。

今回の75回目の国連総会は
前代未聞の危機を克服する総会になるでしょう。
ヴォルカン・ボズクル議長の就任をお祝いし、
議長の卓越した指導力に大きく期待します。

感染病だけでなく平和、経済、環境、人権など
数多くの地球の懸案を解決するために献身しておられる
アントニオ・グテーレス事務総長にも敬意を表します。

議長さま、

私たちが直面した「コロナ19」の危機は
人類の日常をそっくり変え
世界の経済と国際秩序さえも変化させています。
75年前、国連を創設した先覚者たちのように
大変革の時代に私たちが進むべき道がどこなのか、
ふたたび知恵を集めなければならない時です。

韓国は「開放性」、「透明性」、「民主性」という
民主主義の核心価値を防疫の3大原則に据え、
国民みなが防疫の主体となりました。
「多者主義」はまた、韓国の共同体精神と結合し
「皆のための自由」という新たな実践を可能にしました。
韓国の国民は「私」の安全のために「隣人」の安全を守りました。
韓国政府は国境を封鎖せず、防疫物資を分け、
「隣」の範囲を「国境」越しに広げることで、
防疫と経済をともに守っています。

結局韓国が今日、コロナを克服している力は
人類が作ってきた価値、国連が守ってきた価値でした。
コロナを打ち倒す答えは遠くある訳ではありません。
「人類の普遍価値」に対する信頼という、
国連憲章の基本精神に戻ることです。
「多者主義」を通じより包容的な協力を始めることです。

先覚者たちは「より良い世界」を夢見て国連を創設し、
人類の普遍的価値を増進させる輝かしい業績を残しました。
これからコロナ以降の国連は
保健協力、持続可能な発展のための経済協力、気候変動への対応などの
地球規模の難題解決のために、
「人類普遍の価値」をより広め拡散させなければなりません。
今年一年、各国が展開してきたコロナとの戦争は
いかなる国家も独力で、また「隣人」に対する配慮なく
危機を乗り越えられないことを如実に見せてくれました。

私は今日、ポストコロナ時代、国連の新しい役割として、
共に良く生きるための多者主義、
「包容性が強化された国際協力」を強調して申し上げたいと思います。

議長さま、

「包容性が強化された国際協力」は、「誰も疎外せず」
共に自由を享受し、繁栄することです。
自国の中では不平等を解消し
隣人と共に私の安全と持続可能な発展を保障することであり、
国際的には共同繁栄のために
近隣諸国の立場と状況を考慮して協力するものです。

何より重要なことは「人類の生命と安全」です。
国連の「包容的多者主義」は、
全ての国にコロナワクチンを普及できるかどうかで、
一つ目の試験台に上がることは明らかです。

ワクチンと治療剤の開発に向けた国際協力だけでなく、
開発後の各国の「公平なアクセス権」が保障されるべきです。
国際募金などを通じ国際機関が十分な量のワクチンを先に購入し、
貧困国や開発途上国もその恩恵を受けられるようにすべきです。

韓国は、世界保健機関と世界ワクチン免疫連合の
「世界のワクチン供給メカニズム」に積極的に参加しています。
韓国は「国際ワクチン研究所」の本部がある国として、
開発途上国向けの安価なワクチン開発・普及活動に
積極的に協力します。


コロナの第2次、3次大流行の恐れが依然としてあるだけに、
韓国はK−防疫の経験を国際社会と積極的に共有し
持続的に共に歩んでいきます。

地震の後の津波のように
「経済の衝撃」が私たちを襲っています。
防疫のための国境封鎖と人的・物的交流の萎縮により、
世界経済の回復はさらに難しい状況です。

実にとても難しい課題ですが、
我々は「防疫」と「経済」の二兎を一緒に捕まえなければなりません。
コロナ危機の中でも
連帯と協力の多者主義と
規範に基づいた自由貿易秩序を強化していかなければなりません。

韓国は、グローバルサプライチェーンの維持と企業家など
必須人材の移動を促進しようと努めてきました。
韓国は発展の経験を開発途上国と共有し、
国連が追求する「持続可能な発展目標」を達成するための
国際社会の努力にも積極的に参加します。
持続可能な経済構造を率いる包容性を強化するため、
「危機は不平等の深化」という公式を破り、
「誰も疎外されない経済回復」を成し遂げなければなりません。

韓国は「韓国版ニューディール」という挑戦を始めました。
デジタル・ニューディールとグリーン・ニューディールを共に行う
韓国経済の全面的な大転換であり、
不平等社会から包容社会へと進むための約束です。

韓国はコロナによる影響を最小限に抑え、
経済回復を早めるためにすべての国と協力し、
国連が目指す「包容的多者主義」に向けた国際協力にも
積極的に参加します。

去る9月7日は、韓国政府が主導して国連が採択した
「青空のための国際澄んだ空気の日(International Day of Clean Air for blue skies)」でした。
人類の日常が止まると、世界各地から現れた青空、
「コロナのパラドックス」は、各国の努力と国際協力によって
人類が青い地球を回復できるという希望を見せてくれます。
私は国連を中心に
「より良く、より青い再建」に向けた国際協力が
発展していくことを期待します。

韓国は「パリ協定」の忠実な履行をはじめとする
新気候体制確立の努力に積極的に協力しています。
今年の年末までに「2030年国家温室効果ガス削減目標」である
「国家決定寄与」を更新し国連に提出する予定であり、
「長期低炭素発展戦略」も設け、
「2050年低炭素社会の実現」に国際社会と協力していきます。

気候変動への対応に成功するためには、
「包容性が強化された国際協力」が不可欠です。
先進国が数百年、数十年にわたって歩んできた道を
産業化が進む開発途上国が短期間で追いつくことはできません。
開発途上国との格差を認め、
先進国がより多くの努力を傾け、最善策を探さなければなりません。

韓国は「先進国と開発途上国をつなぐ架け橋の役割」として
気候対応に積極的に取り組みながら、
開発途上国に韓国の経験を忠実に伝えていきます。
来年、ソウルで開催される「P4G首脳会議」は、
気候変動への対応に向けた国際的な連携の重要性を確認する
席になるはずです。

議長さま、

世界平和を実現しようとする国連精神が
最も切実に求められるのが韓半島(朝鮮半島)です。
韓国は変わることなく南北の和解を追求してきましたし、
朝鮮半島の非核化と恒久的な平和のために
たゆまず努力しています。
韓国は国際社会の支持と声援に力を得て
平昌冬季五輪を
北朝鮮と共にする平和五輪として成功させることができ、
3回の南北首脳会談へとつながりました。
米朝の2人の指導者による大胆な決定により実現した米朝首脳会談は、
対話を通じ平和プロセスを進展させることができるということを
確認する場になりました。

私は昨年の国連総会の演説を通じ
朝鮮半島問題を解決するための
「戦争不容認」、「相互安全保障」、「共同繁栄」の3つの原則を提示し、
非武装地帯を「国際平和地帯」にするという構想も
皆さんに明かしました。
しかし今も、朝鮮半島の平和は未完成の状態にあり、
希望に満ちた変化も中断されています。

しかし、韓国は対話を続けていきます。
私たち全員に必要なことは一歩さらに進むことです。
国際社会の支持と協力が続くならば
朝鮮半島非核化と恒久的な平和が必ず実現すると
変わらず信じています。

何より南と北は「生命共同体」です。
山と川、海を共有し密接につながっています。
感染症と自然災害にも共にさらされており、
これを克服するためには、一緒に協力していく他にありません。
防疫と保健協力は、朝鮮半島の平和を実現する過程でも、
対話と協力の端緒となるはずです。

今、世界は
自国の国土を守る伝統的な安全保障から包括的安全保障へと
安保の概念を拡張しています。
私たちは今
災害と災難、テロとサイバー犯罪など非伝統的な安保脅威と
国際的な犯罪に共同で取り組んでいますが、
戦争以上に人類を脅かすコロナの危機の前で
隣国の安全が自国の安全と直結していることを
より深く認識するようになりました。

今や一つの国家の能力だけで
包括的安保のすべてに責任を負うことは難しいです。
一国の平和、一人の生命を守るために
国境を越えた協力が必要であり、
多者的な安全保障システムを備えなければなりません。

その間私は
南北双方に役立ち、豊かに暮らす「平和経済」を語ってきました。
また、災害災難、保健医療分野における南北間の協力を強調してきました。
私は今日コロナ以降の朝鮮半島問題もやはり
包容性を強化した国際協力の観点から考えることを期待し、
北朝鮮を含め中国と日本、モンゴル、韓国がともに参加する
「東北アジア防疫・保健協力体」を提案します。
多くの国が共に生命を守り、安全を保障する協力体は
北朝鮮が国際社会との多者的協力により
安全保障を保障される土台となります。

特に今年は朝鮮戦争が勃発して70年になる年です。
朝鮮半島に残っている悲劇的な状況に終止符を打つ時が来ました。
もはや朝鮮半島で戦争は完全に、
そして永久的に終息しなければなりません。
朝鮮半島の平和は北東アジアの平和を保障し、
ひいては世界秩序の変化に肯定的に作用するでしょう。
その始まりは
平和に対するお互いの意志を確認できる
朝鮮半島「終戦宣言」だと信じています。
「終戦宣言」を通じて和解と繁栄の時代に前進できるよう、
国連と国際社会も力を合わせてくれることを願っています。
「終戦宣言」こそが朝鮮半島における非核化とともに、
「恒久的平和体制」の道を開く扉になるでしょう。

韓国はK−防疫だけでなく、
平和を制度化し、その大切な経験を国際社会と分かち合いたいです。
多者的な安全保障と世界平和に向けた国連の努力に
先頭に立って貢献する道となるでしょう。

議長さま、
事務総長と各国代表団の皆さま、

私たちはコロナによって
世界がいかに緊密に連係しているかを確認し、
結局人類は「連帯と協力の時代」に向かうでしょう。

私たちは未来を準備しながら同時に
私たちが生きる今日も同じく変化させなければなりません。
一人一人の小さな行動は
積もり集まって私たちの今日を自由にするでしょう。

私は国連が今日この瞬間から
新しい時代、「包容的国際協力」の中心となることを望みます。
ありがとうございます。

 


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