【趙廷訓議員 特別寄稿】 福島原発処理水の海洋投棄、日本だけの問題ではない
【趙廷訓議員 特別寄稿】 福島原発処理水の海洋投棄、日本だけの問題ではない
  • The New Stance編集部
  • 承認 2020.10.23 15:00
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菅義偉首相が27日の関係閣僚会議で決定を下すと見られている、福島第一原発処理水の海洋放出問題。韓国の現役国会議員が「放射性物質の放出は日本だけの問題ではない」と指摘し、日本政府と市民に再考を促す一文を本紙に寄稿した。
韓国の政党「時代転換」の趙廷訓(チョ・ジョンフン)議員。同議員室提供。
韓国の政党「時代転換」の趙廷訓(チョ・ジョンフン)議員。同議員室提供。

尊敬する日本国民の皆様へ

こんにちは。私は大韓民国の第21代国会議員、趙廷訓(チョ・ジョンフン)と申します。

なぜ近隣国の議員が日本のメディアに寄稿するのかと不思議に思われるでしょう。まず自己紹介しますと、私は過去に国際機構である世界銀行で15年間勤め、米国・欧州・アジア諸国などで経済・社会開発に携わりながら、国際社会の一員として活動してきました。このような多様な経験のおかげで、私は自分自身を国際社会の一員と考え、ある国が他国に与える影響についてもよく理解できるようになりました。私はこの文章を通じ、やはり国際社会の一員である日本の国民の皆様に、どうしてもお伝えしたいメッセージがあります。

韓国と日本は水により分かれていますが、それと同時に水によってつながっています。最近、日本政府は、福島第一原発の処理水を海洋放出する方針を固めました。日本は多核種除去設備(ALPS)と呼ばれる施設を用いて、大部分の放射性物質を取り除いたと主張しておりますが、放射性物質は完全に除去されるものではありません。

読売新聞の世論調査によると、日本国民の半分にあたる50%(41%賛成、9%コメント無し)の方々が、この方針に反対することを示しています。 私はこれが日本国民の民心であると思います。日本政府がこれを考慮せず、今回、重大な決定を押し通すことが非常に残念であります。 私と多くの韓国国民も、放射性物質の濃度を法定基準値以下に下げた後で海に流して処分するという日本政府の決定に対して、非常に大きな危機意識を持っています。 

第一の理由は、海洋生態系の破壊や環境汚染に対する懸念です。気候危機やPM2.5といった粒子状物質の拡散など、ますます激しくなる地球の変化を肌で感じながら、環境問題には国境が存在しないことを改めて感じています。このため、環境問題は全世界が協力しないと解決し難い問題であります。特に日本は、1997年の気候変動の問題への具体的な方策として提示された、温室効果ガスの削減目標値を定めた京都議定書が採択された地である点でも意味深いです。

海洋環境問題も他の環境問題と同様です。海洋生態系はすべてつながっています。したがって、日本が福島第一原発の処理水を海洋に放出する場合、隣国である韓国はもちろん、潮流や風に沿って海でつながっている至る所へと広がっていくでしょう。そしてこれは単なる海洋破壊の問題だけではありません。この海水が蒸発し、雨となって地下水に浸透する場合、私たちの予想をはるかに上回る多くの地域に影響を与えるでしょう。

一例として 北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)核実験場の近くに住んでいた人々に原因不明の病気が広がり、健康が悪化しました。その原因として、核実験場から漏れた放射能物質が地下水と渓谷の水に浸透し、日常生活において蓄積される直・間接的な被爆が挙げられています。これははっきりとした健康権の侵害であり、次の世代にまで続く痛みです。生態系と人類の健康のためにも、完全に取り除かれていない処理水の海洋放出は止めなければなりません。 

第二に、私は韓国と日本が仲の良い隣人になることを誰よりも願います。 両国には、いろんな過去の出来事がありますが、それにもかかわらず、一緒に共存しなければならない隣国同士であります。私は、隣国同士がお互いを批判ばかりするより、仲の良い隣人になることを目指しています。

ご承知のように、仲の良い隣人になるために最も必要なことは、お互いへの信頼です。良い隣人になるためには、同等の存在であることを認めて、お互いを尊重し、隠し事や疑うよりも共有・交流する関係になるべきと考えています。特に、隣人に影響を与えるような一大事がある場合は、事前に一緒に話し合い、決定を下す際には互いを排除してはいけません。

北朝鮮の核問題が韓国だけの問題ではないように、日本の放射性物質問題も、日本だけの問題ではありません。韓国が北朝鮮の核施設の情報を周辺国と共有し話し合ったように、日本もこの問題にについて一方的に通知するのではなく、関連情報を透明に公開し、近隣諸国の合意を得て一緒に決めていく必要があると考えています。

今回の方針を確定させることは、海洋法に関する国際連合条約に正面から反する措置であり、韓国はもちろん、国際社会の激しい抵抗に直面するでしょう。 日本は直接署名した海洋法に関する国際連合条約の基準に基づいて、核処理水と核廃棄物を処理する義務があります。 

保存タンク容量が限界に近づいたからと、提示された基準を妥協しても良いという考えは受け入れ難いです。海洋大国である日本が、海洋環境の保護と保全上の基本的な原則と義務事項等を自らが守らない姿を世界に見せることは、日本の国際的な影響力と信頼性に深刻な悪影響を与えるでしょう。

私は東日本大震災の被害者の方々に対する慰労の気持ちを持っています。かつて世界銀行の業務の一環として、原発事故のあったチェルノブイリの地域経済活性化プロジェクトを担当した経験があり、福島に対しても格別な気持ちがあります。原発事故により福島の住民の方々は、多くのものを失い苦しんできました。地域の漁民たちを考えてみてください。放射能汚染水が再び福島県沖に放出される場合、人々は、福島産海産物の購入や輸入をためらうことになり、漁民たちは再び厳しい生活にさらされるでしょう。

これらの理由に基づき、そして韓国と日本の利益を考慮すると、私は日本政府の福島第一原発の処理水の海洋放出に反対するしかありません。そして10月19日、在韓日本大使館を通じ梶山弘志経済産業相にも同様のメッセージを伝達しました。今回の寄稿により、日本国民の皆様が自らの健康と幸福を守る選択をしてくださるよう、国家の良心になってくださるよう願います。また、国際社会の一員として、日本政府がより正しい判断をするよう支持されることをお願いいたします。

ありがとうございます。
 


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