日中韓の保健大臣が、新型コロナへの緊密な対応を宣言…「ワクチンは公共財」とも
日中韓の保健大臣が、新型コロナへの緊密な対応を宣言…「ワクチンは公共財」とも
  • The New Stance編集部
  • 承認 2020.12.16 09:05
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日本と中国、そして韓国は新型コロナウイルス感染症への防疫の対応において、緊密に協力していくことを明記する宣言を発表した。
会合に参加する韓国の朴淩厚(パク・ヌンフ)保健福祉部長官。写真は保健福祉部提供。
会合に参加する韓国の朴淩厚(パク・ヌンフ)保健福祉部長官。写真は保健福祉部提供。

●連携と共に国際的な協力も行う

今月11日、日中韓の保健大臣は第13回日中韓三国保健大臣会合を開いた。同会合は毎年持ち回りで行われているが、新型コロナ拡散のため、今年はオンラインでの開催となった。日本からは田村憲久厚生労働大臣が、中国からは馬暁偉(マ・ギョウイ)国家衛生健康委員会主任が、韓国からは朴淩厚(パク・ヌンフ)保健福祉部長官がそれぞれ出席した。

会合では宣言文が採択され公表された。これによると、新型コロナの予防および統制のために「相互の学習を増進させ、各国の状況に合った効果的な新型コロナ対応策を施行し、専門部署間での交流と協力を持続的に強める」としている。

また、「新型コロナの予防と管理におけるICT(情報通信技術)の役割」を共調した項目もあった。韓国の保健福祉部によると、韓国のICTに基づく疫学調査支援システムや、人工知能 (AI)を活用した新型コロナ診断キットや治療剤の開発などの事例を説明したという。

さらに三か国は、新型コロナの診断・治療のための医薬品開発やワクチンの開発、医療装備の活用に対する経験を共有する努力も強めていくとした。

宣言ではまた、三か国が「『COVAXファシリティなどの国際的な枠組みと協力し、新型コロナウイルスワクチンが世界的な公共財であると引き続き支持し、低中所得国におけるワクチンの入手 可能性と購入可能性の確保に貢献する』という文言も含まれた。

COVAXファシリティとは、世界が公正に新型コロナワクチンにアクセスできることを保障する国際メカニズムのことで、世界保健機構(WHO)や世界ワクチン免疫連合(GAVI)などが構築したものだ。

今回の会合において、韓国の朴長官は「三か国の協力を今後も発展させていく」ことを提案すると共に、新型コロナワクチンと治療剤の公平な普及のために「日中韓のワクチン受給共同メカニズムをつくり、ワクチン・治療剤の開発のために臨床データと技術を共有する必要がある」と共調した。

「日中韓三国保健大臣会合」は2007年に新型インフルエンザに対応するため、韓国の呼びかけで始まった。来年の会合は日本で開催される。以下は宣言文全文。日本の厚生労働省の仮訳を引用した。

●第13回 日中韓三国保健大臣会合共同声明(2020年12月11日) (仮訳)

我々、中華人民共和国、日本国、大韓民国の保健大臣は、2020年12月11日に、テレビ会議を通じて、日中韓三国保健大臣会合を開催した。

新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延が国民の幸福、生活及び安全にもたらす深刻な課題と、それがそれぞれの国及び世界全体の社会経済の発展に悪影響があることを認識する。

パンデミックによって失われた生命と苦しみに哀悼の意を表し、そしてすべての医療専門家、医療従事者、およびその他の最前線で活躍する人々に深い敬意を表する。

パンデミックの際の国際保健のガバナンスにおける重要な役割を果たす世界保健機関(WHO)を引き続き支援する。WHOやその他の国際機関の活動や目標に従って、我々も活動を行い、目標を設定し、新型コロナウイルス感染症対策の実行を継続し、保健分野における協力を推進する。

我々は、予防、管理、監視、対応の対策について、自由で開かれた、透明性のある、適時の情報共有に同意する。我々は日中韓感染症フォーラムなどを通じて引き続き協働する。

各国は、国内においても国際的にも共同で、保健制度の対応能力を向上させ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを促進させ、すべての人々の健康を最大限に達成し、持続可能な開発のための国連2030アジェンダにおける健康関連の目標の実現を推進する。

我々は、新型コロナウイルス感染症への対応における各国間の連携を強化することや、各国間の協力をさらに強化するために、日中韓三国保健大臣会合が開始された当初からの成果を振り返る。

ウイルスを協働して制御することに焦点を当て、今回の議題には、新型コロナウイルス感染症の予防とコントロール、パンデミックにおけるICTの役割、新型コロナウイルス感染症の診断と治療が含まれる。

1. 効果的な新型コロナウイルス感染症の予防及び管理の方法

我々は日中韓大臣による特別ビデオ会議、ASEAN+3の新型コロナウイルス感染症に関する特別サミット、ASEAN+3 健康開発高官会議の特別ビデオ会議、その他の関連する会議、並びに会議で得られた重要なコンセンサスは、三国が有効な対策を共有し、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに立ち向かうために非常に重要である。

我々は、新型コロナウイルス感染症に対峙するための、各国の状況に沿った、効果的な対策を実施するために、三国が相互に経験・知識の共有を強化することを提案する。中国、日本、韓国は、技術部門間 の交流と協力を引き続き促進する必要がある。

2. 新型コロナウイルス感染症の予防と管理におけるICTの役割

我々は、“遠隔操作が可能、効率的、多才、便利”なインターネットテクノロジーの他に類を見ない利益効果や、最前線で働く医療従事者の負担を軽減させるために、新たなサービスモデルの導入を行っていただいた全ての関係者に感謝する。

これらの努力は、感染拡大を抑え、物資配分の最適化を行うことによる、パンデミックの予防と管理の助けともなる。我々は、各国がICTの活用を通して学んだ教訓に基づき、三国がお互いに協力して新型コロナウイルス感染症の制御を支援することを提案する。

各国は、国際協力を促進し、最良の行動を共有し、ICTの利用を促進することにより、国民のヘルスサービスと福祉が改善することを期待している。それゆえ、我々はUHC(編注:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」)の推進において、協力を強化する。

3. 新型コロナウイルス感染症の診断、治療及びワクチンにおける協力

我々は、治癒率を上げ、致死率を下げることを目的とした、新型コロナウイルス感染症の診断と治療に関するプロトコールを革新するという、三国の努力を称賛する。

我々は、三国に対し、医薬品とワクチンの開発、及び検査薬と医療機器の適応における経験の共有を引き続き強化するよう要請する。各国は、医療製品と医療サービスの供給を改善し、最前線の医療従事者を保護するために、医療分野への投資を増やす必要がある。

我々は、COVAXファシリティなどの国際的な枠組みと協力し、新型コロナウイルスワクチンが世界的な公共財であると引き続き支持し、低中所得国におけるワクチンの入手可能性と購入可能性の確保に貢献する。

4. がんとの戦いにおける協力

アジア太平洋地域におけるがんの予防と管理を促進するために、各国が開催している日中韓がんワークショップに感謝する。我々は、がんの予防と管理の分野における三国の協力をより深め、新たな状況下における協力と発展について共に議論を行う。国際協力を拡大する。引き続き、アジア太平洋地域における三国の役割を果たし、 世界的ながんの予防と管理を強化する。

5. 健康的な高齢化における協力

各国が主催する日中韓高齢化フォーラムなどのプラットフォームを通じた経験の共有、政策対話、学術ワークショップを称賛する。これらのプログラムは、政府部門と科学研究機関の間の実質的な交流と協力を促進してきた。

高齢者にやさしい社会の構築、情報化時代における高齢者の正当な権利と利益の保護、高齢者への医療サービス、医療と社会的ケアの統合を含む、三国の共通の関心分野における、情報共有、経験の共有、人材育成、プロジェクト協力の強化を提案し、三国の高齢者の要求を満たし、人々がより幸福となるように、科学研究機関が共同で科学研究を進展することを推奨し、支持する。

6. 次回の会議

我々は、三国保健大臣会合が、三国協力事務局の関与により定期的に開催され、関連するすべての活動が公平で、相互主義、相互利益に基づいて行われるという共通の認識を再確認する。次回の日中韓三国保健大臣会合は、2021年に日本で開催される。

 


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