
●本質は国家暴力に対する賠償・補償
韓国の与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表は18日、『済州4.3特別法』修正案を国会に発議した。
新法の正式な名称は『済州4.3事件真相究明および犠牲者名誉回復に関する特別法改正案』となる。今年7月27日に先に発議されていた『済州4.3特別法全部改正案』を党・政府・青瓦台(大統領府)で修正したものだ。
『済州4.3事件』とは1948年4月3日から54年9月まで済州島で続いた、島民と軍・警察との間に起きた闘いと鎮圧の過程だ。通称では『済州4.3事件』と呼ばれるが、今はまだ正式な名称がない。
当初は済州島の住民が「警察や右翼組織による弾圧への反対」や「南北同時選挙の実施」さらに「米軍政の拒否」を掲げ蜂起した。これに韓国政府が「焦土化作戦」と呼ばれる激しい弾圧を加え、住民を巻き込んだ殺戮劇が起きた。
その後1950年に朝鮮戦争が始まると、政府は「4.3」に加担したとされる人物を北朝鮮に協力する恐れがあると無差別に殺害しもした。7年7か月のあいだ、全島人口の10分の1にあたる25000人から30000人が亡くなったと推定されている。
【参考記事】[アーカイブ]「済州4.3事件」70周年を迎えた韓国の今 -国家による暴力と分断を越えて
https://www.thenewstance.com/news/articleView.html?idxno=2937
新法の特徴は、遺家族に補償を行う点で政府(企画財政部)と党の合意を見た上で発議された点にある。これにより国会で成立する可能性が高まっている。だが、問題は今なお山積だ。特に補償の定義をめぐって激しい議論が起きている。
新法では「犠牲者に対する慰謝料など」としているが、これを巡っては23日、長く同事件の真相究明と名誉回復に取り組んできた『済州4.3研究所』が「名称を『犠牲者にたいする補償』と修正することを要求する」と書面で表明した。
書面ではまた「(先に提出されていた)改正案は犠牲者と遺族に対する国家の補償規定を明確にすることで、過去に国家の過ちによって起きた被害の回復の手続きを踏めるようにしたもの」と説明。
その上で、「与党指導部と政府が協議する過程で犠牲者に対する『補償』が『慰謝料などの特別な支援』に希釈され、即時施行ではなく『支援を講究し、必要な基準を作るために努力する』と後退した」と今回発議された法案に問題があるとする立場を鮮明にした。
新法ではまた、慰謝料の支給基準と手続きを決めるため来年6か月間研究を実施するとし、支給は2022年からになるとしているが、同研究所はこれについても「企画財政部の遅延戦略もしくは補償金の下方修正をするためのものではないか疑問だ」と明かしている。
これに関し、国会の予算政策処は補償には約1兆5000億ウォン(約1400億ウォン)の予算が必要と見通している。遺族がいない者や、訴訟を通じすでに補償を受けた3500人余りは対象から除外される。
なお、新法の発議で中心的な役割を果たした与党のオ・ヨンフン議員は韓国メディアとのインタビューで、慰謝料について「賠償の意味で受け止めても大きな問題はない」と答えている。
そんな中、「済州4.3」の問題解決に取り込む全国組織『済州4.3汎国民委員会』も22日に声明を出し、「国家暴力に対する国家の法的な責任が存在するならば、これを法律用語で明瞭に確定させなければならない」とし、「政府は国家暴力に対する国家の賠・補償の原則を尊重し実践せよ」と主張した。
一方、済州4.3犠牲者遺族会は23日、同法案を受け入れると明かした。
同会は報道資料の中で「財政支援研究を行う過程で、遺族の意見を頻繁に伝えるという前提の下、受け入れることを決めた」とすると同時に、「これをきっかけに、和解と相生(共生)の精神に基づき、今後与野党がしっかりと協議し、今回の臨時国会内に4.3特別法が必ず成立するように最善を尽くしてくれることを望む」とした。
これについて地元紙『済州の声』は「遺族会は名分よりも実利を選んだ。特に文在寅政府で『済州4.3特別法』の改正案が成立しない場合、今後どうなるか分からないという憂慮の声が多かった」と解説している。