韓国で数万人の移住労働者がビニールハウスなど劣悪な宿舎で居住...死者も
韓国で数万人の移住労働者がビニールハウスなど劣悪な宿舎で居住...死者も
  • The New Stance編集部
  • 承認 2020.12.30 14:00
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韓国ではここ数年、劣悪な環境の下で外国人移住労働者を働かせる問題が提起され続けてきたが、改善には程遠い。京畿道での死亡事故を受け、ふたたび社会の関心が高まっている。
28日、青瓦台前でデモと会見を行う移住労働者支援団体。聯合ニュース提供。
28日、青瓦台前でデモと会見を行う移住労働者支援団体。聯合ニュース提供。

●極寒の中、カンボジア国籍の労働者が死亡

今月28日、『移住労働者の寄宿舎産業災害死亡事件対策委員会』は青瓦台(大統領府)前の広場で開いた会見で、「死因は肝硬変であるという検死の所見発表があったが、故人の死は単純な疾病による死亡では説明できない」と述べた。

さらに、「寒波警報の中でも暖房のないビニールハウスの問題、安全ではない居住環境の下で強度の高い労働を続けなければならない問題、病気になっても適時に治療を受けられない問題などが複合的に作用して亡くなった可能性が高い」と指摘した。その上で、真相究明と対策を政府に求めた。

これに先立つ今月20日、カンボジア国籍の30代の女性労働者A氏が、京畿道抱川(ポチョン)市内のビニールハウスの中で亡くなった姿で見つかった。A氏は約4年前に韓国に入国し、最近まで野菜農場で勤務していた。

抱川警察署は事件後の24日、「国立科学捜査研究院によると死因は肝硬変による合併症で、凍死したような証拠は発見されなかった」と発表している。

だが、これに対する反論もある。A氏が発見された19日から20日にかけて、抱川市は零下20度誓い寒波に見舞われた。抱川移住労働者センターなどは、A氏の同僚の証言などを元に「当日、宿舎では暖房が稼働せず、A氏以外の労働者は別の宿舎で眠っていた」と明かしている。

今月、韓国統計庁が発表した『2020移民者滞留実態および雇用調査結果』によると、20年5月現在、農林・漁業分野で働く外国人は約5万7千人。こうした分野で主にはたらく「非専門就業(E-9)」ビザで滞在する外国人のうち、カンボジア国籍の所有者は13.7%で最も多い。

25日、抱川移住労働者センターのキム・ダルソン代表は「亡くなった女性が暮らしていた宿所はビニールハウスの中に建てられたサンドイッチパネルの建物」だったとし、「忘れた頃に移住労働者の劣悪な住居の問題が提起されるが、状況は改善されていない」と述べた。

亡くなったA氏が暮らしていたビニールハウスの宿舎。市民団体提供。
亡くなったA氏が暮らしていたビニールハウスの宿舎。市民団体提供。

●最低基準に満たない宿舎が3割超

韓国は今年、史上最長の梅雨を記録したが、京畿道の利川市で罹災した100余人のうち、80%以上が農家の付近に作られた臨時の住居で過ごしていた移住労働者だったことがあった。

国会の環境労働委員会に所属する与党・共に民主党のヤンイ・ウォニョン議員が雇用労働部から受け取った資料によると、今年7月現在、外国人雇用許可を持つ事業所1万5773か所のうち、労働部が定めた外国人寄宿舎の最低基準に満たない割合は31.7%にのぼり、昨年同時期の10.3%よりも21.4%ポイント増加した。

このように、移住労働者の住居の3割以上が、冷暖房施設や消防施設のない、ビニールハウスやコンテナとなっている。

また今年8月、移住労働者を支援する市民団体が545人の当事者を対象に行った調査によると、26.4%(複数回答)は、宿舎の環境が作業場の騒音や埃、匂いに露出していると答え、21.3%はエアコンがないと明かした。また、回答者の11.2%が消化器やスプリンクラーなど防火設備がないと答え、暖房がない場合も6%にのぼった。

韓国の労働部は昨年、外国人雇用法を改定し、1人あたりの寝室の面積を2.5平方メートル以上、トイレ、浴室、冷暖房、消防施設の設置など12の基準を定めた。事業主がこれを守らない場合には項目ごとに減点する制度を導入し、環境改善に努めた。

しかし、こうした制度も処罰や事業所の閉鎖といった罰則がないため、環境改善には至っていない。

これについて上記団体の関係者は「支出を減らしたい農場主の立場では、処罰も微々たるもので、取締りも積極的でないため改善に乗り出すことはないだろう」とし、「地方自治体や労働部が移住労働者の共同宿舎を建てたり、補助金を支給するなどの現実的な方法を作るべき」と提案している。

また、ソウル大学法学専門大学院のソ・ラミ教授は『農業移住女性の人権実態・制度改善の課題』という報告書の中で、「産業研修制度では宿泊施設を提供する能力がある業者にだけ、研修場の採用資格を付与するようになっている」とし、「雇用許可制も同じように、一定水準以上の宿舎を備えた業者にだけ外国人勤労者の雇用を許可するように改定されるべき」と提言した。

なお、抱川市での事件を受け、京畿道の李在明知事は24日、「健康悪化で亡くなったとされるが、ビニールハウスの宿舎で的確な診療機会も、身体を回復させる空間も無かったという問題の本質が変わる訳ではない」とし、「移住労働者の臨時宿舎に対する実態調査を行い、彼らが安定した環境で過ごせるようにする」と対策を約束した。


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