文大統領、新年の挨拶で「回復、統合、跳躍」を強調…新型コロナ克服念頭に
文大統領、新年の挨拶で「回復、統合、跳躍」を強調…新型コロナ克服念頭に
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2021.01.09 16:30
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韓国の文在寅大統領が新年の挨拶を行い、昨年を新型コロナのため苦しかったが最小限の被害で乗り切った1年と振り返ると同時に、今年は反転攻勢に出る年にしようとに国民に呼びかけた。
今月7日、青瓦台で新年挨拶会に臨む文在寅大統領。青瓦台提供。
今月7日、青瓦台で新年挨拶会に臨む文在寅大統領。青瓦台提供。

●「互いが互いの希望となった年」

7日、青瓦台(大統領府)の忠武室で新年挨拶会が開かれた。

新型コロナウイルス感染症拡散防止のため、オフラインでの出席者は青瓦台から兪英民(ユ・ヨンミン)大統領秘書室長や徐薫(ソ・フン)国家安保室長など6人に限られた。

他にオンラインで国会議長・憲法裁判所長・国務総理・中央選管委員長や与野党代表および各部長官などの要人、市民団体や経済界・宗教界を代表する人物と、昨年韓国社会に貢献した市民8人などが参加した。

文大統領は挨拶文の冒頭で、「昨年は本当に苦しい一年だった」と振り返った。これは言うまでもなく新型コロナに振り回され続けたことを表してのことだろう。韓国は2020年、61,769人が新型コロナに感染し、942人が亡くなった。

また、参席した各界の代表者たちを含め、すべての国民に感謝の気持ちを述べた。この日のオンライン参席者には病院を丸ごと新型コロナ専門病院とした「平澤(ピョンテク)博愛病院」の院長も参加していた。

そして、改めて2020年を「防疫と経済の双方で善戦した大韓民国」と称した。昨年11月から続く新型コロナの第三次流行については「最後の峠を越えている」としながら、「国民が収めた『K-防疫』の誇らしい成果は決して色あせることはない」と述べた。

その上で、2021年の新年を「回復の年」、「統合の年」、「跳躍の年」とすると明かした。

「回復の年」については「大切な日常の回復」という目標を挙げた。来月から始まる計画のワクチン接種、韓国企業が開発した治療剤、さらに昨年から示してきた徹底した防疫を通じコロナを克服するとした。

「統合の年」については、「コロナによる格差を縮めること」と「互いに尊重し合うこと」を挙げた。前者では政府によるセーフティネットの強化を強調し、後者では「私たちが成し遂げた成果を一緒に認め自負し、より大きな発展のきっかけとする」と説明した。

これは韓国社会の宿痾とも言える進歩派と保守派の葛藤を縫合しようとする意志の発露とも見られる。

「跳躍の年」については「先導国家への跳躍」を掲げた。具体的には「世界で模範国家と認められた」と昨年の成果を誇示し、グリーンとデジタルに代表される「韓国版ニューディール政策の本格的実行」や「2050年まで炭素中立(二酸化炭素排出を他の手段で相殺しゼロにすること)政策により世界と共に気候変動への対応をリードしていく」と説明した。

さらに文政権のメインテーマの一つであった朝鮮半島平和プロセスについても「条件が許すならば、韓半島の非核化と恒久的な平和、南北関係の発展のためにも最後まで努力を傾ける」と意欲を見せた。

以下は全文。翻訳は徐台教が行った。

オンラインで行われた新年挨拶会の様子。青瓦台提供。
オンラインで行われた新年挨拶会の様子。青瓦台提供。

●文在寅大統領新年挨拶(2021年1月7日)

皆さま、謹んで新年のお慶びを申し上げます。昨年は本当に苦しい一年でした。 平凡な日常が懐かしくなり、それが願いになるほど皆が大変でした。新年には私たち国民の皆が健康で幸せになることを、いつにも増して切実な思いで祈ります。

辛丑年の年初に、新年挨拶会を二度とないかもしれない特別な方法で行うことになりました。 寒さが厳しいほど人の温もりが恋しくなります。 私たちの今すぐ手を取り合うことはできませんが、互いに想う気持ちはさらに切ないものになり、新型コロナを克服する意志もさらに高まっています。

昨年、新型コロナの感染が広がる中でも大韓民国は止まりませんでした。 国民の皆が心を一つにして防疫の主体となってくださったため、より良い日常、より温かい社会を作ることができるという希望が大きくなりました。

今日、この場に困難な隣人のそばを守られた方々と医療スタッフが集まってくださり、昨年私たちの社会を心強く守ってくださった宗教・経済・市民団体など各界各層の方々をお迎えしました。一年間、私たち国民すべての献身と労苦に、心より感謝申し上げます。 国民の皆さまも困難の中で最善を尽くしたという事実に誇りをお持ちになるよう願います。

2020年は私たち皆にとって大変な一年でしたが、互いが互いの希望となった年でもありました。新型コロナに対応する第一線に立った防疫陣と医療陣、(社会的)距離の確保の中でも日常を維持できるよう支えてくれた必須労働者たちの犠牲に、涙が出るほど感謝しています。

経済危機の前でより多くの汗を流した労働者、力の限り雇用を維持した企業、困難な状況にある人々に力を分け与えたボランティアと市民団体、国民の心を慰めてくれた文化芸術家とスポーツ選手たち、和合と希望の精神を励ましてくれた宗教界まで、多くの方々が自らろうそくとなって、コロナの闇を灯してくださいました。

不便さに耐えながら「相生(共生)」の力を発揮した国民の皆さまが心強い支えでした。 国民たちが成熟した市民意識をもって自ら防疫の主体となってくれたおかげで、国民は経済的な被害も最小限に抑えることができました。

防疫と経済の双方で善戦した大韓民国は、全国民が共に描いた「2020年私たちの自画像」でした。 その自負心はひたすら国民のものです。 今なお困難は続いています。 体も心も疲れるかもしれません。 しかし私たち国民が収めた「K-防疫」の誇らしい成果は決して色あせることはないでしょう。

皆さん、新年は「回復の年」です。 いま私たちは新型コロナの第3次流行の最後の峠を越えています。 とても疲れ大変ですが、私たち国民の力量ならば、この危機も十分乗り越えることができます。来月から私たちはワクチン接種を始める計画です。韓国の企業が開発した治療剤の審査も進めています。徹底した防疫とワクチンそれに治療剤を通じて、私たちは必ずコロナを克服し、大切な日常を回復するはずです。

新年は「統合の年」です。新型コロナを通じ私たちはお互いにつながっていることを実感しました。最も困難な隣人から先に助けようという国民たちの心が集まり、来週から第3次災害支援金が支給されます。国民就業支援制度の導入により、雇用セーフティネットと社会セーフティネットが大きく強化され、コロナによる格差を縮めるための努力にも拍車がかかっています。

より重要なのは、心の統合です。 私たちがコロナに対抗して傾けた努力を互いに尊重し合い、私たちが成し遂げた成果を一緒に認め自負し、より大きな発展のきっかけとする時、韓国社会はより統合された社会へと進むことができるでしょう。

新年は「跳躍の年」です。新型コロナの困難の中で、私たちは大韓民国を再発見しました。私たちは決して2流ではなかったし、永遠の2等でもありませんでした。私たちは「K-防疫」だけでなく、世界最高のデジタル技術、早い経済回復、優れた文化的な力量、発展した民主主義の中の成熟した市民意識に至るまで、他国がうらやむ国民の力量を示し、世界で模範国家として認められました。

これから私たちは「韓国版ニューディール」の本格的な実行により、早く強い経済回復を成し遂げ、先導国家として跳躍していきます。また、「2050炭素中立」政策により世界と共に気候変動への対応をリードしていきます。条件が許すならば、韓半島の非核化と恒久的な平和、南北関係の発展のためにも最後まで努力を傾けます。

昨年、私たちは国民一人ひとりの犠牲と献身で希望を守り抜きました。連帯と協力により「共に良く暮らす国」に向かっていけるという自信を得ました。2021年、私たちは牛歩千里、牛の歩みで千里を行くように、粘り強く着実に、そして最後には大切な日常を取り戻すでしょう。先導国家に向けて共に力強く進みましょう。ありがとうございます。


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