
●「少数民族への弾圧はより大きくなる」と指摘
韓国紙『京郷新聞』は1日、李亮喜(イ・ヤンヒ、64)前国連ミャンマー人権特別報告官のインタビューを掲載した。
韓国・成均館大学の児童青少年学科教授である同氏は、2014年5月から2020年4月まで、人権特別報告官(日本では報告者とも)を務め、17年にはミャンマー軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャの掃討事件を調査、これを「虐殺(ジェノサイド)」と位置づける報告を行った。
李前報告官はまず、ミャンマー軍部がクーデターを起こした理由について「軍部は昨年11月の総選挙が不正選挙であると不服を唱えるなど兆候はあった」としながら、「ミン・アウン・フライン国軍総司令官が今年6月の引退を控え、その間軍部が蓄積した富と権力を奪われるという恐れや焦りがあったように見える」と分析した。
さらに、今回のクーデターがミャンマーに与える影響について、「軍は2015年にアウンサンスーチー顧問が率いる民主主義民族同盟(NLD)に民政を移譲したが、同顧問も政権の座に着いて以降は民主化の約束を果たさなかった。政治犯は増え政権に批判的な学生たちも拘禁され、少数民族とメディア弾圧もひどくなった」と指摘した上で、「ミャンマーの民主主義はこうした文民政府時代よりも後退するだろう」と見通した。
また、懸念される少数民族への影響については「アウンサンスーチー顧問下でも軍部がロヒンギャやラカイン族など少数民族に対し、人権蹂躙や戦争犯罪を行ってきた。最近では軍がラカイン族を無差別に射殺し民間人の家を爆撃した」とし、「軍部の集権により少数民族に対する弾圧はより大きくなる」との見方を示した。
その上で、国際社会の責任を問う質問について、「ミャンマーの民主主義が後退した理由には韓国をはじめとする国際社会の影響が大きい」と述べ、その一例として韓国政府が「ミャンマー軍部が少数民族の虐殺を行った地域にバラマキ投資を行い、軍部に多額の韓国の資金が流れた」点を挙げた。アウンサンスーチー顧問も「投資誘致のため目をつぶった」という。
2018年8月時点の統計での韓国からミャンマーへの投資は163件、約38億8400万ドルで世界6位(5.0%)となっている。
李前報告官は今後の対策として、「今からでも国際社会がきちんとした役割を果たすべき」とし、「国連安保理がミャンマーでのクーデターを案件として回付し、代表団をミャンマーに派遣すべき」と語った。


なお、今回のクーデターを受け、国連安保理は2日(現地時間)に緊急会議を招集するとしている。
また、バチェレ国連人権高等弁務官は1日(同)に発表した声明を通じ「軍部が平和的な集会を尊重し、不必要もしくは過度な暴力の使用を自制するようにする国際人権法を守るべき」と訴えている。