新型コロナに対する「社会的距離の確保」戦略で賃金7.4%が減少…韓国銀行が推算
新型コロナに対する「社会的距離の確保」戦略で賃金7.4%が減少…韓国銀行が推算
  • The New Stance編集部
  • 承認 2021.02.03 13:24
  • コメント 0
記事を共有します

韓国で韓国政府の新型コロナ対策を分析した報告書が発表され、社会的に脆弱な層への悪影響が大きくなることが明らかになった。
報告書は全12ページからなる。表紙をキャプチャしたもの。
報告書は全12ページからなる。表紙をキャプチャしたもの。

●所得が少ないほど高い賃金損失率

韓国銀行(日本の日本銀行にあたる)は今月1日に発表した報告書『コロナ19拡散と社会的距離戦略が賃金・所得分配に与える影響』の中で、昨年3月から12月まで韓国政府が行った「社会的距離の確保」戦略による潜在的な賃金損失率を、7.4%と計算した。

「社会的距離の確保」戦略とは、業種別に営業の可否や人数・時間制限など営業形態を定める他に、「5人以上の集合禁止」といった一律的な規制を含む韓国政府の新型コロナ対策だ。感染者数に応じ3段階(細かくは5段階)に分けられている。現在は首都圏で2.5段階(5段階中の4段階目)となっており、地方では2段階(同3段階目)の地域もある。

所得の大小により5つのグループに分類した「5分位別の潜在的な賃金損失率」では、▲1分位(下位20%)は−4.3%、▲2分位(20〜40%)は−2.9%、▲3分位(40〜60%)は−2.2%、▲4分位(6〜80%)は−2.1%、▲5分位(上位20%)は−2.6%と、所得が少ないほど賃金損失が大きい傾向になるとした。

また、賃金損失率は常用(常勤)職では−0.8%だった反面、臨時・日雇い職では−6.4%、高卒以下の学歴では−4.1%に比べ大卒−2.1%、大学院卒−0.8%と差が見られると分析した。

報告書ではまた、「社会的距離の確保」戦略の影響により、2020年の韓国のジニ係数は0.009%ポイント上昇し、貧困指数も6.4%ポイント上昇すると見通した。

ジニ係数は0〜1までで表され、値が大きいほど所得不均衡の程度が高い。貧困指数は所得の中間値の60%以下が占める比率を表し、高いほど所得分配状況が悪いと見なされる。

また、韓国でスペインやイタリアのような封鎖措置(ロックダウン)が行われる場合の勤務可能指数については0.41と推算した。これは経済全体における労働の供給の59%が失われるというものだ。

業種別には卸売業・小売業・宿泊飲食・芸術スポーツ余暇・サービス業で、個人の特性別では男性・臨時日雇い職・低学歴層の勤務可能指数が低かった。これは結局、こうした人々の賃金損失率がより高いということになる。

オ・サミル韓国銀行調査局次長は今回の報告書について「留意すべきは今回の研究の賃金損失などの推定値は潜在的な最大損失率で、現実での損失率は政府の財政支援などの効果で、今回n数値よりも低いと予想される」としている。

また、「新型コロナと社会的距離戦略により所得分配が悪化しただけに、新型コロナの被害が集中した社会的に脆弱な層を中心に、より選別的な支援が必要だ」と主張した。


関連記事