
●性差別は「職場」で
世論調査会社『韓国リサーチ』は今月3日、韓国におけるジェンダー(性別)葛藤や性差別などに関する世論調査結果を発表した。
男女の葛藤、とは日本では聞き慣れない言葉だ。かみ砕いて表現すると、男性と女性の間で差別が存在していることや、それを是正しようとする中で生まれる新たな衝突などを含む、「性別」を基とする社会問題を指すものだ。
調査は今年2月5日から8日まで18歳以上の男女1000人を対象に行われた。いくつか結果を見ていく。
まず「韓国社会の男女葛藤の程度をどう思うか?」という質問については、63%が「深刻だ」と答えた(「とても深刻だ」13%、「だいたい深刻だ」49%)、他に「別に深刻ではない」29%、「まったく深刻ではない」2%、「分からない」6%だった。
「深刻だ」とした割合は男性60%、女性65%で大きな差はなかった。また、年代別には18〜29歳が75%、30〜39歳が76%、40〜49歳が68%と他の世代と比べ高かった。50〜59歳では54%、60歳以上は50%だった。
次に、場所ごとの男女差別の深刻度(とても深刻+だいたい深刻だの合計)を聞く設問では、「職場」61%、「家庭」35%、「学校」30%の順となった。
男女別に見ると、男性は「職場」48%、「家庭」25%、「学校」24%であった反面、女性は「職場」73%、「家庭」45%、「学校」35%と答えている。
また、「最近1年の間に人々との関係の中で性差別的な経験をしたことがあるか」という設問について、「ある」という回答は26%だったが、20代女性は57%、30代女性は48%、40代女性が34%と他の層よりも顕著に高かった。
さらに「性差別的な経験をした関係(複数選択可)」を重ねて問う設問には、「職場の同僚や上司との関係」が59%と最も高かった。次に「家族や親戚との関係」が41%で続いた。特に女性の回答者の52%が「家族と親戚の関係」を選択した点が目立った。
こうした結果から、韓国では若い女性たちが男性よりも差別を感じており、その領域は職場を中心に、家庭にまで広範囲に及んでいることが分かる。
●若者世代の男女の認識は「正反対」
他に、「韓国社会はどの性別が暮らしやすい環境と思うか」という設問では「女性が暮らしやすい環境」27%、「性別間の差がない」29%、「男性が暮らしやすい環境」44%という結果だった。
男性が暮らしやすい、という認識が明らかになったが、世代ごとに認識は大きく異なる。
20代男性では「女性が暮らしやすい環境」46%と、「男性が暮らしやすい環境」20%を大幅に上回っており、30代男性でも同51%、17%とこの傾向は顕著だ。
この数値は、最近とみに韓国で指摘されているように、20代男性がMeToo運動やフェミニズムに対し冷淡な態度を取る点と関連している。
若い男性にとって女性はすでに「弱い存在」ではなく「優秀な競走相手」であり、女性の権利を主張する運動は「そんな女性がさらに強くなるもの」と受け止められているというものを指す。
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一方、20代女性は「女性が暮らしやすい」5%、「男性が暮らしやすい」77%、30代女性は同9%、65%だった。
こうした結果からは若者世代の男女が見ている風景が全く異なることが分かると同時に、この認識の差が男女間の摩擦となっている点が理解できる。
前述した「韓国社会の男女葛藤の程度」を聞く設問で20、30代の「深刻」という認識が他の世代よりも高い理由でもある。
そして若者世代は性平等の実現についても悲観的だ。
「韓国社会で性平等を実現するのにどれだけ時間がかかると思うか?」という設問に対し、「ある程度時間がかかる」42%、「とても長い時間がかかる」36%、「性平等は実現しない」14%、「分からない」7%だった。
だが若者層を見ると、18〜29歳は「とても長い時間がかかる」45%、「性平等は実現しない」20%、30〜39歳は同42%、19%と答えるなど他の世代よりも暗い展望を抱いていた。
一方で「性平等のために努力している」と答えた割合は78%(男性77%、女性78%)と高かった。18〜29歳は67%、30〜39歳は75%と平均を下回ったが、それでも性別をめぐる視点が日常と結びつく中で、高い関心を持っていることが明らかになった。