東日本大震災から10年…淡泊な韓国社会の反応が映す日韓関係、文大統領のメッセージは「無し」
東日本大震災から10年…淡泊な韓国社会の反応が映す日韓関係、文大統領のメッセージは「無し」
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2021.03.12 06:00
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未曾有の大震災から10年。当時大阪に住んでいた筆者は韓国で今日、日韓の溝が想像以上に深いことを改めて感じた。
今月1日、「3.1独立運動記念式典」で黙祷する文在寅大統領。青瓦台提供。
今月1日、「3.1独立運動記念式典」で黙祷する文在寅大統領。青瓦台提供。

●10年前には40億円以上の寄付も

東日本大震災から10周年を迎えた11日、韓国のメディアはこぞって日本の「今」を伝えたが、何か物足りないものが残った。

その大部分は、“4万人の避難民”や“多数の行方不明者”、そして“廃炉まで遠い原発”といった、今なお復興とは遠い姿を扱うもので、確かに日本に残る爪痕の一端を描き出していた。

だがこの日、主要紙の中で社説を通じ東日本大震災に言及したメディアは『ハンギョレ』一社にとどまった。その内容も、韓国社会の問題意識でもある脱原発と結びつけたもので、日本の現状に共感するものとは言い難いものだった。

震災発生当時、韓国の市民や政府機関は日本を応援する気持ちで、海外で起きた災害への募金額としては歴代最高となる約600億ウォン(当時のレートで約43億円)を寄付した。

韓国政府はさらに震災翌日の3月12日から救助隊を派遣し、100人以上の隊員が日本で救助にあたった。元日本軍“慰安婦”被害者と支援者による「水曜集会」も震災直後には日本政府に対する非難を止め、李容洙(イ・ヨンス)さんが「日本頑張れ!」とエールを送った。

しかし震災から10年を迎えた11日、ついに文在寅大統領は日本に向けたメッセージを発することはなかった。

声明を通じ「トモダチ」を強調した日米首脳や、震災が起きた午後2時46分に合わせツイッターを通じ「絆」をアピールするメッセージを伝えた、フランスのマクロン大統領や台湾の蔡英文総統とは対照的だ。

鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が日本の茂木敏充外相に慰労の言葉を伝える書信を送ったことが、韓国政府が日本に向けて行った唯一の公式的なアクションだった。

●「公共外交の側面からも残念」

一方、日本に向けた最も「濃い」メッセージを発したのは、韓国の超党派国会議員で構成される「韓日議員連盟」だった。

同連盟は日本語と韓国語で発表したメッセージの中で、「犠牲者と遺族、被災者をはじめとする日本の国民に深くお見舞い申し上げる」とし、「今も生活の拠り所を失い、住み慣れた故郷を離れて仮設住宅で暮らしている方々、他の地域に移住し、家族と離れ離れになっている方々が、一日も早く故郷に帰られることを心より祈る」と明かした。

その上で、難しい関係に置かれている両国が「再び心を開いて協力しあい、域内の繁栄と平和のために貢献することと期待する」とし、東日本大震災からの復興や新型コロナウイルス危機の克服、そして7月の東京オリンピックの開催に至るまで、同連盟が「いかなる協力も惜しまない」と強調するものだった。(全文は記事末尾に添付)

それにしても文大統領のメッセージが無いというのは意外だった。昨年の3月11日にも無かったが、10周年の今年は言及しても良さそうなものだ。

11日夜、こんな韓国社会の反応について、韓日議員連盟の諮問委員を務め日韓を含め東アジアの国際政治に詳しい趙眞九(チョ・ジング)慶南大学校極東問題研究所助教授(日本センター長)に聞いた。

趙助教授は前出の韓日議員連盟の声明の中にあった、東京五輪開催成功のための韓日合同セミナーを4月に東京で行うという内容について、「両国の政府が動きづらく対話も無い中で、議員同士が集まって対話の環境を作ろうというもの」と背景を明かした。

趙助教授はまた、韓国メディアの姿勢についても疑問を呈した。

「隣国の日本が今も苦しんでいるのに、犠牲者や遺家族に力を添えるメッセージを発するべきだった」とし、「これが日韓関係の現住所ということだ」と表現した。

文大統領のメッセージが無かったことについては、「ひと言、言及があってしかるべきだった。誰のせいでもなく、大きな災害があった日で、日本には同胞もたくさん住んでいる。公共外交の側面からも残念だ」と評価した。

文大統領は今月1日の「3.1独立運動」102周年記念式典の演説で、日本に対して明確な融和メッセージを送っていた。それに続く肯定的なメッセージが期待されたが、何も無かったことで先の発言が色あせる可能性もある。

深すぎる日韓の溝はいつ修復されるのか。ひとまずは五輪に向けた議員外交に期待することになるだろう。

●韓日議員連盟 声明全文

韓日議員連盟 声明
※同連盟の文書をそのまま転載したもの。

東日本大震災10周年を迎えた日本国民に慰めの言葉を申し上げ、

希望を祈ります

 2011年3月11日金曜日の午後、東日本を襲った大地震と津波は想像もできないほどの大災害でした。ここに福島原発事故まで重なって、多くの被害が伴いました。その日の痛みと悲しみを記憶しながら、10年が経った今日、私たちは犠牲者と遺族、被災者をはじめとする日本の国民に深くお見舞い申し上げます。

 今も生活の拠り所を失い、住み慣れた故郷を離れて仮設住宅で暮らしている方々、他の地域に移住し、家族と離れ離れになっている方々が、一日も早く故郷に帰られることを心より祈ります。被災からの回復が完結するまでにはもっと時間が必要だと思いますが、去る10年を振り返りながら、再び希望を抱くことができたのは、協力と思いやりに満ちた日本国民の熱情と底力のおかげだと思います。

 しかし今、世界はもう一つの災難の真ん中にいます。新型コロナ・ウィルスという前代未聞の伝染病は、人類の生存そのものを脅かしています。やっとワクチンの普及がはじまりましたが、その終わりがいつになるか、楽観を許しません。災害と災難が続くような状況だからこそ、隣国としての韓国と日本は難関を乗り越えるためにもっと緊密に協力し対応しなければなりません。

 3·11の時も、韓国国民は日本の苦痛に共感し、どの国よりも先に救助隊を派遣し、義援金を集め、苦しんでいる隣国の友人のために気をもみました。両国は古くから歴史的、文化的に活発な交流をしながら互いに学んできました。今でも両国は互いにとって非常に重要な隣国であるという事実は変わりません。

 韓日両国は民主主義や人権など、基本的な価値を共有しています。ともに経済力を持っている両国が協力すれば、互いの成熟と発展はもちろんのこと、北東アジアをはじめ、東アジアと世界の平和と繁栄のために担える仕事が少なくないはずです。

 残念ながら今韓国と日本は難しい関係に置かれています。しかし、いずれにせよ両国は再び心を開いて協力しあい、域内の繁栄と平和のために貢献することと期待します。その日が早く訪れるよう両国の政治家が胸襟を開いて韓日の現在と未来を率直に論議する機会が必要な時です。このため韓日議員連盟は、まず今年の7月に予定されている東京オリンピック開催成功のための韓日合同セミナーを4月中に東京で開催することを準備しています。 この韓日合同セミナーは、韓日·日韓議員連盟が先頭に立ち、両国の財界、文化界、スポーツ界の専門家たちが話し合いながら協力する場となると思われます。

 私たちは3·11東日本大震災による犠牲者を記憶し、遺族や被災者の皆様にもう一度、慰めの言葉を申し上げます。さらに、日本国民が、東日本大震災と新型コロナ・ウィルスという未曾有の危機を乗り越え、7月の東京オリンピックをも成功的に開催できることを祈ります。韓日議員連盟はそのすべての過程において、いかなる協力も惜しまず行なうことを約束します。

2021年3月11日

韓日議員連盟会長 金振杓(キム・ジンピョ)


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