韓国政府が異例の「対ミャンマー軍政措置」を発表...軍警との協力止めODA見直しも
韓国政府が異例の「対ミャンマー軍政措置」を発表...軍警との協力止めODA見直しも
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2021.03.13 23:30
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韓国政府がミャンマー軍部への圧力を強めている。国会や文大統領による軍部糾弾メッセージに続き、軍部や警察との協力を断つ直接的な措置を採ることを決めた。
19年9月、ミャンマーを訪問した文大統領。スクールバスを寄贈した際の様子。右はアウンサンスーチー国家顧問。青瓦台提供。
19年9月、ミャンマーを訪問した文大統領。スクールバスを寄贈した際の様子。右はアウンサンスーチー国家顧問。青瓦台提供。

●韓国で相次ぐアクション

韓国政府は12日、クーデターにより軍部が権力を掌握したミャンマー政府に対する対応措置を発表した。

この中で韓国政府は「政府はミャンマーの民主主義回復と、民主主義に向けたミャンマー国民たちの熱望を支持するという立場を数度にわたり表明してきた」とし、「アウンサンスーチー国家顧問など拘禁者に対する即刻的な釈放、市民たちに対する暴力使用の中断、合法的で民主的な手続きによる平和的な問題解決を求めてきた」と強く主張した。

韓国政府がこのように、単独で他国に一種の制裁措置を発表するのは初めてのことだ。韓国はなぜこのように「入れ込んで」いるのか。

2月1日にミャンマー軍部がクーデターを起こし、すぐにミャンマー市民が民主化を求め全国的なデモとして立ち上がった時から、韓国メディアは高い関心を持って事態を報じてきた。

その背景には同じように軍事政権に立ち向かい、民主化を勝ち取った韓国の歴史がある。特に今のミャンマーの姿を、1980年5月に全羅南道・光州(クァンジュ)市で起きた「5.18光州民主化運動」とだぶらせる姿が目立つ。

両者の共通点について、30を超える光州市の市民団体が11日に結成した『ミャンマー軍部クーデター反対と民主化支持光州連帯(ミャンマー光州連帯)』では以下のように説明している。

自国民を対象にした照準射撃、民主人士とデモ指導部に対する逮捕と拷問、老若男女を問わず行われた無慈悲な暴行、真実を隠すためのメディア統制、そして特殊部隊の投入に至るまで、2021年のミャンマーは1980年5月の光州と瓜二つだ。

こんな関心の高さは政治家の行動となって表れている。

韓国国会は先月26日に与野党合意の下で『ミャンマー軍部クーデター糾弾および民主主義の回復と拘禁者の釈放を求める決議案』を採択し、「ミャンマー軍部が民主主義の結実を踏みにじった」と強く非難した。

国会ではさらに今月8日、宋永吉(ソン・ヨンギル)外交統一委員長はじめ72人の与党議員が国連のアントニオ・グテーレス事務総長宛に書簡を送り、「ミャンマーへの積極的な介入」を訴えている。

また、今月6日には文在寅大統領がツイッターやFacebookといったSNSの公式アカウントを通じ「ミャンマーの国民たちに対する暴力は即刻中断されるべき」と、ミャンマー軍部の弾圧を正面から糾弾した。

さらに、5日にはソウル市議会で、11日には慶尚南道議会でそれぞれ、ミャンマー軍部のクーデター糾弾し、拘禁者の釈放と民主主義秩序の回復を求める決議案が採択されていた。

12日に政府が発表した措置は、こうした動きの第一段階の集大成と位置づけられる。

同日、韓国の『聯合ニュース』は韓国外交部当局者の「(措置の背景は)人権と民主主義の価値を重要に思うため」というコメントを伝えている。

4つの措置、広がる韓国市民の支持

この日の措置は「共同報道資料」という名前で発表された。企画財政部・国防部・産業通商資源部・法務部・防衛事業庁・警察庁という6つもの政府機関が関わっていることから、政府間で調整を進めてきたことがうかがえる。

内容は四つだ。順に見ていく。

まず一つ目は「政府はミャンマー側との国防および治安分野での新規協力および協力を中断する」というものだ。

韓国軍は今年、ミャンマー軍との定例協議体を作り、ミャンマー軍将校へのトレーニングを行う予定だったが、これを取りやめる。同じくミャンマー警察との治安業務における協力も撤回した。

二つ目は、「政府はミャンマーに対する軍用物資の輸出を認めない計画で、産業用の戦略物資の輸出許可も厳格に審査していく計画」というもの。

これはミャンマー現地で使われているデモ鎮圧用の催涙弾が韓国製のものという指摘を意識したものといえる。過去、2014年から15年にかけて韓国製の催涙弾がミャンマーに輸出されていた。この日の発表で韓国政府は、「19年1月以降、ミャンマーに対する軍用物資の輸出事例はない」と明かしている。

また、産業用の戦略物資については、産業用以外の用途に使える化学物資などを対象にしている。

三つ目は、「政府はミャンマーに対する開発協力事業を再検討する」というものだ。韓国政府はODA(政府開発援助)を通じた開発協力を行っているが、これを一旦凍結する。

ただ、「ミャンマー市民たちの民生と直結する事業と人道的事業は続けていく」とし、軍部と住民を分けている。なお、19年に韓国からミャンマーに提供されたODAは有償・無償合わせ約9000万ドル(約90億円)となっている。

四つ目は韓国内でのものだ。「韓国内に滞留(滞在)中のミャンマー人たちが、ミャンマー現地情勢が安定するまで滞留できるように、人道的な特別滞留措置を施行する計画」とした。

これはビザ延長ができず、出国しなければならないミャンマー人が韓国に続けて滞在できるようにし、既にビザが切れているミャンマー人に対しても強制出国措置を採らないというものだ。

韓国政府はこれに先立つ11日に開催した国家安全保障会議(NSC)で、「ミャンマー軍部・警察の暴力的な鎮圧を強く糾弾し、ミャンマーの憲政秩序が民主的・平和的に早急に回復されるよう国際社会と共に行える実質的な措置を採る」と予告していた。

3日、ソウル市内でミャンマー民主化運動支持記者会見を行う市民団体。主催者側提供。
3日、ソウル市内でミャンマー民主化運動支持記者会見を行う市民団体。主催者側提供。

●高まり続ける市民の声

早速の措置となった訳だが、背景には市民の強い要望があった。

東南アジアでの韓国企業と現地政府の癒着を追及するNGO『国際民主連帯』のナ・ヒョンピル事務局長は13日、筆者の電話インタビューに対し「一般の市民の支持が過去にない程に高い。4月7日の選挙(ソウル市長・プサン市長選)を控えた政府としても、その点を意識したのでは」と説明する。

ナ事務局長は一方で、「ミャンマーの軍部関連企業に投資している韓国企業に対する措置がなかった点は残念だ」と政府措置が至らなかった点を指摘した。

韓国ではミャンマーの民主化を求めるムーブメントが明らかに高まっている。

13日には光州でミャンマー市民を支持する市民集会が持たれ、カトリック教界ではヨム・スジョン枢機卿がミャンマーのマウンボー枢機卿に連帯の意志を表明すると共に5万ドルの支援金を送った。

カトリック系のNGOでは募金運動を始めるなど動きが活発だ。ソウルでは新型コロナ下で可能な範囲のデモが計画されている。

ミャンマー現地に長く住む韓国人のAさんは13日、筆者とのやり取りの中で「電化製品や韓流などで、ミャンマーでも韓国は魅力的な国として認識されている。軍政にどこまで圧迫を加えられるかは別として、韓国政府や市民のふるまいによってミャンマー市民に与える影響は小さくないと思う」と明かしている。

積極的な韓国政府、市民社会の姿勢がどこまで状況に変化をもたらすことができるか。現地の状況は予断を許さないが、韓国では今後5月18日に至るまでの間、ミャンマー軍部を糾弾する声は大きくなり続けていく事だけは確かだ。


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