
●「未送還捕虜とその子孫への人権侵害」が初めて含まれる
23日(現地時間)、国連人権理事会は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)で起きている人権侵害を糾弾し責任の究明を求める人権決議案を採択した。
47の会員国で構成される同理事会はこの日、スイス・ジュネーブで開かれた第46次会議で、北朝鮮人権決議案を票決のない合意(コンセンサス)として決議した。同決議案が採択されるのは、2003年に国連人権委員会(当時)で採択されて以降、19年連続となる。
決議案では「北朝鮮で長い間行われ、今も続いている制度的で広範囲な人権蹂躙を強く糾弾する」とした。
また、新型コロナウイルス感染症の大流行と関連し、国際機構の職員の出入国と社会的に脆弱な層への支援のための物資の輸入を許可することの重要性を強調する一方、国境での武力使用の自制および人道支援団体の活動を許可することを求める内容も含まれた。
北朝鮮政府は昨年1月から国境封鎖を続けており、北朝鮮国内の国連職員は全員、海外に出国している状況だ。また、中朝国境を渡ろうとする人物に対し無条件で発砲しているとされる。
決議案にはさらに、南北離散家族問題の至急性と重要性が強調され、朝鮮戦争(1950〜53年)時に北朝鮮側の捕虜となったまま未送還の状況にある韓国軍捕虜とその子孫に対する人権侵害に対する憂慮が初めて含まれた。未送還捕虜とその子孫は少なくとも5万人以上にのぼるとの推算もあり、この部分は、韓国内でも大きく報じられている。
決議案にはまた、「脱北者と脱北者団体による北朝鮮人権の実態についての証言を聞くよう」指示する内容も含まれている。これは韓国統一部の李仁栄(イ・イニョン)長官が先日、「北朝鮮人権の記録(証言)を検証する必要がある」と発言した点を考慮したものとの見方がある。
一方、韓国は欧州連合(EU)が提出した決議案の共同提案国に参加しなかった。19年、20年に続き、3年連続で共同提案国から外れたかたちだ。
韓国の外交部はこんな判断について「様々な状況を総合的に考慮して立場を定めた」と、具体的な説明を避けつつ、「北朝鮮住民の人権が実質的に改善するよう、国際社会と共に努力するという立場の下、昨年と同様に今年もコンセンサスの採択に参加した」と明かしている。
だが、こんな韓国政府の態度は北朝鮮政府に過度に「忖度」するものとして、保守紙や人権活動家を中心に批判の声が上がっている。
また、今年は米国が3年ぶりに共同提案国に名を連ねた。18年6月に国連人権理事会を脱退した米国は今年2月、バイデン政権の発足と共に同理事会に復帰している。
同理事会ではまた、トマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告官の任期を一年延長した。
駐ジュネーブ北朝鮮代表部の韓大成(ハン・デソン)大使は決議案に対し、「人権の真の増進と保護とは無関係だ」とし、「拒否する」と反発した。