‘韓国軍によるベトナム人虐殺’、初の関連資料公開はわずか「15文字」
‘韓国軍によるベトナム人虐殺’、初の関連資料公開はわずか「15文字」
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2021.04.12 22:00
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過去、ベトナム戦争に延べ30万人以上の兵士を派遣した韓国。当時、ベトナム現地で起こしたとされる民間人虐殺について、国に情報公開を求める行政訴訟で原告側勝利が確定し、先日資料が公開された。だが、その中身はたった「15文字」に過ぎなかった。
今月9日の会見で、国家情報院が公開した資料について説明する原告の林宰成(イム・ジェソン)弁護士。本人提供。
今月9日の会見で、国家情報院が公開した資料について説明する原告の林宰成(イム・ジェソン)弁護士。本人提供。

●3年8か月かかった行政訴訟

1968年2月12日、韓国軍兵士がベトナム中部クアンナム省に位置するフォンニィ村で行ったとされる民間人70余人の虐殺事件。2018年には当時の「作戦」に参加していた元兵士が証言を行い、当時幼な子だった被害者が韓国政府を訴えるなど、具体的な証言が相次いでいる。

しかし韓国政府はこれまでこの事実を認めないばかりか、関連記録の公開を拒み続けてきた。事件翌年の69年11月に、政府情報機関の中央情報部(現・国家情報院)が事件に関わった韓国軍幹部3人を尋問したことを、当人たちが認めているにもかかわらず、だ。

このため、韓国の『民主社会のための弁護士会(民弁)』は17年8月に「中央情報部が69年11月頃に3人を調査し作成した文書(尋問調書など)の目録」と「中央情報部が69年頃、フォンニィ村事件と関連し作成した報告書など文書の目録」の情報公開を請求した。

だがこれに対し国家情報院は「外交関係に関する事項として、公開される場合に国家の重大な利益を顕著に害する憂慮があると認められる情報」という『情報公開法』の規定を掲げ非公開処分の決定を下す。

『民弁』はこのため17年11月に上記の非公開処分を取り消すことを求める行政訴訟を提起し、18年7月にソウル行政法院は「知る権利と表現の自由」を根拠に「非公開は違法である」との判決を宣告する。国家情報院は控訴するも同年11月にソウル高等法院により棄却された。

そんな中、国家情報院は18年12月にふたたび「個人情報が公開される場合、私生活の秘密または自由が侵害される」という『情報公開法』の条文を根拠に非公開処分を再度行った。民弁側は翌19年3月にこの非公開処分の無効と取消を求める行政訴訟を提起した。

そして20年1月に取消判決(3人の生年月日を除き公開する)が宣告された。これに対し、国家情報院が控訴、上告をしたがいずれも棄却され、今年3月11日に棄却判決が確定した。一度目の情報公開請求から数えて3年8か月ぶりの解決だった。

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●「15字の中身」は

だが今月5日、原告の民弁・林宰成(イム・ジェソン)弁護士に送られた目録には、わずか15文字が記載されているだけだった。

「マイクロフィルム撮影目録」と書かれた書類には、「題目」の部分に尋問対象となった3人の名前と地域が記載されているだけだった。名前3文字が3人分で9文字、地域が2文字ずつで6文字、合わせて15文字だった。

他の分類番号や作成日時、フィルム形態といった欄はすべて空白のままだ。『民弁』のキム・ナムジュ弁護士はこれを「無残な目録」と表現した。

史上初めて公開された、ベトナム戦争時の韓国人による現地人虐殺に関する資料。名前と地域名が書かれているだけだった。林宰成弁護士提供。
史上初めて公開された、ベトナム戦争時の韓国人による現地人虐殺に関する資料。名前と地域名が書かれているだけだった。林宰成弁護士提供。

今月9日、キム・ナムジュ弁護士と前出の林弁護士はソウル市内で会見を開き「まだ始まったばかり。真実をいつまでも隠すことはできない」と、国家情報院にさらなる情報・記録の公開を求めていく姿勢を明らかにした。

なお昨年4月21日、今回の資料公開の「舞台」であるフォンニィ村で、虐殺事件に遭遇し被害を受けたベトナム人女性のグエン・ティ・タン氏(59)は、韓国政府を相手に損害賠償を求める訴訟を提起した。

この裁判の公判で政府は「『被害事実を信じることは難しい』という立場」(林弁護士)を明かしているが、原告側弁護士となっている『民弁』の弁護団は9日の会見で、「国家情報院がフォンニ・フォンナット村虐殺に関し、当時の将兵を対象に調査した記録の一切を公開するよう要求する」としている。

こうした要求を国家情報院が拒否する場合、『民弁』側は調査記録の一切について情報公開請求を行うとし、政府がこれすらも拒否するならば、「再び長い訴訟手続きを経ても公開を勝ち取る」と声を上げた。

なお、『民弁』側はこの日、外交部、国防部などにも関連資料を公開するように求めた。一方で「ベトナム参戦軍人全体に虐殺者のレッテルを貼る意図があるものではない」とし、「虐殺に関わった軍人たちが人生を整理する時期に差し掛かり、事実を明かし懺悔し許しを請うことを望む」と訴えた。

その上で、「真実の究明と反省、容赦、和解のための時間は私たちにいくらも残されていない。門が閉じる前に勇気をだしてくれることを切実に呼びかけたい」と強調した。

 


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