(1)李在明(共に民主党)
与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は9日午後、ソウル市内にある金大中図書館で行われた、故金大中(キム・デジュン)大統領のノーベル賞受賞21周年記念式典に参加した。
故金大統領は在任中の2000年に、史上初の南北首脳会談を実現させたことで同年、ノーベル平和賞を受賞した。
この日、李候補は祝辞で、「国家が存在する理由は一般的に、国家共同体自体を守る安全保障、国家の構成員内部の秩序維持、そしてより良い暮らしのための民生だとされる。最も基本的で、最も重要なことは結局、国家共同体を守ることであり、これをとても具体的に言うと戦争から国民の生命と安全を守ることと言える」と述べた。
李候補はまた、「金大中大統領が韓半島(朝鮮半島)の平和のため熾烈に努力した結果、いまの韓半島がそれなりに安定している」とし、今後の課題として朝鮮半島の非核化を挙げた。
そして「北韓(北朝鮮)に対する制裁や圧迫を通じて核を放棄させるか、もしくは交流と協力を通じてみずから放棄するようにするのか、一般的にアメとムチの中の一つを選べといわれる」としながら、「しかし状況はとても複雑であるため、どちらか一方の方法だけでは完全な目標を達成するのは難しい」と見解を述べた。
その上で、「国の安全保障問題は決して政争の対象になってはならない。アメとムチ、制裁と協力と適切に合わせながら、双方ともに、世界が皆ともに利益を得る道を探していかなければならない」と主張した。
李候補は一方で、同席した対抗候補である最大野党・国民の力の尹錫悦候補に対しても意見を披露した。
任期を半年ほど残した文在寅政権が総力を傾けている南北米、もしくは南北米中による朝鮮戦争の終戦宣言を取り上げ、これに対し「国民の合意がないため時期尚早」とする尹候補に向かって、「67%が終戦宣言を支持している。客観的な事実を確認し、もう一度、転向的な再検討を要請する」と呼びかけた。
なお、同式典への参加を報告するSNSで李候補は以下のように述べている。
「金大中大統領のノーベル平和賞受賞21周年記念式に行ってきました。民主主義と韓半島(朝鮮半島)の平和のために人生を捧げた金大中大統領に尊敬を表します。平和が経済であり、経済が平和です。平和の中で経済が成長します。金大中大統領の念願だった韓半島繁栄の道をつないでいきます」。

(2)尹錫悦(国民の力)
最大野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補も9日午後、ソウル市内で行われた故金大中大統領のノーベル賞受賞21周年記念式典に参加した。
ライバルである李在明候補と同席となったが、尹候補は祝辞の中で、「私は検事をしていた時も金大統領を尊敬し、自叙伝も隅々まで読んだ」とし、「金大中大統領は生涯を民主主義、人権、平和のために献身した」と述べた。
さらに「大統領になってからもいかなる政治報復も行わず、すべての政敵を許し和解する聖人政治家として国民の統合を成し遂げた」とし、「金大統領は過去にとらわれず、未来に進んで行くべきという歴史意識をもって、日本と不幸だった過去の歴史を超え、未来のパートナーとして共にする和解外交政策を採った」と言及した。
尹候補はまた、「韓国は国連の国際機構が認める世界10位圏の経済先進国として発展した。こうして韓国が発展できたのは、誰よりも金大中大統領の貢献がとても大きいと思う。金大統領は就任の辞(1998年2月)で、『国民が主人としてもてなされ、主人の役割を果たす参与民主主義、国民が主人となる政治』を宣言した」と金大統領の言葉を引用した。
その上で、「金大統領はこうした国政哲学をもって、国民基礎生活保障制度を実施し、4大保険を全国民に施行する国民生活の社会セーフティネットを構築し、韓国社会が先進福祉国家にした」と述べた。
尹候補は他に、国家人権委員会の設立やIT情報化政策、IMF通貨危機の克服といった成果を羅列し、「大統領候補として、金大統領の国政哲学と業績を噛みしめながら、今後より発展させ、韓国を公正と常識の基盤の上に、国民が希望を持って皆が幸福に暮らし、青年達が理想と夢を実現できる機会と希望の国になるよう最善の努力を尽くす」と明かした。

(3)沈相奵(正義党)
第二野党・正義党の沈相奵(シム・サンジョン、62)候補は9日午前、北朝鮮との最前線に位置する陸軍第一師団を訪問した。
沈候補は現場の将兵たちと行った懇談会の中で、「果敢な兵営文化の革新」を約束すると共に、文在寅政権になって実施された兵士の月給の上昇や、携帯電話の使用可能など福祉の向上について「正義党の公約が履行されている状態」と述べた。
沈候補は「人口の減少と技術の革新の前で、18か月の徴兵制を今後も維持するのは難しい」とし、現在の徴兵制から募兵制への転換を公約に掲げている。転換を急ぎ、「2030年から完全募兵制にする」と主張した。
その上で、現段階で報酬(手当)の上昇や福祉の増大が必要だとし、「意味のない空港を作るのにお金を使うのではなく、軍人の処遇を改善することに使うよう(両党に)求めていく」と強調した。
なお、沈候補は8日に、「軍将兵の福祉公約」を発表している。この中で、▲軍人に対する国家の責任、▲兵士の基本権の拡大、▲幹部のワークライフバランスの保障、▲最前線の部隊への格別な関心を掲げ、それぞれ改善していくと訴えた。
この日、沈候補は他に、前述した金大中図書館での記念式典にも参加し、その後は『重大災害企業処罰法』改正法を発議する記者会見を開くなど、精力的に日程をこなした。

(4)安哲秀(国民の党)
第三野党・国民の党の安哲秀(アン・チョルス、62)候補は9日、国会で、労働改革に関する討論会に出席した。
韓国メディアによると安候補はこの席で、文在寅政権の労働政策における失敗の最たるものとして、「非正規雇用を無条件に正規雇用に転換しようとしたこと」を挙げた。
安候補自身は前回2017年の大統領選挙で、今後はプラットフォーム労働の普及に伴い非正規雇用が増えると主張していたが、これに反する労働政策を採ったことで「非正規雇用者の不安定な処遇が改善されなかった」という指摘だ。
安候補はさらに次期大統領の最も大きな任務として、「新型コロナ防疫と経済」を掲げ、「防疫が国民の生命を保護することはもちろん、国家経済に及ぼす影響が大きいため、ある国の防疫における実力が、その国の経済水準を決める時代が来ている」と持論を明かした。

(5)金東兗(新しい波)
新党・新しい波の金東兗(キム・ドンヨン、64)候補は9日午後、韓国CBSラジオ『一発勝負』に出演した。対談には、著名評論家の陳重権(チン・ジュングォン、58)氏も参加した。
この席で金候補は、従来と同様に「今週末か来週初めに中央党の結党大会を行う」と明かした。また、中央党結成に先立ち必要な地方の5つの支部についても、「政治を生業にしている人は誰もおらず、ベンチャー企業家や農夫、弁護士など多彩な人々が参加している」と説明した。
また、同党がAI報道官や金候補のアバターを利用した選挙活動を行うとするなか、同じくアバターを用いると明かした最大野党・国民の力の尹候補について、「代読しているだけの候補にアバターが必要か」と鋭く批判した。尹候補の政治経験の無さを突いたものだ。
さらに、与党の李候補については、「尹候補と同じように何を考えているのか分からない。主張する内容の中に哲学と価値を見出せない」とやはり批判した。「尹候補が当選すれば検察の国に、李候補が当選すれば独善の国になる」とも述べた。
金候補は、日本の財務省にあたる企画経済部の長官と経済副総理を務め、10数年のあいだ韓国の国家予算を内部から見てきた専門家でもある。この立場から金候補は、新型コロナ対策における市民への経済的な保障について「果敢に、迅速に、充分に行うべき」と述べた。
その上で現在の李・尹両候補が掲げる対策は「選挙用に過ぎない」とし、両氏が掲げるような「50兆ウォン(約5兆円)、100兆ウォン(約10兆円)の追加予算は現実的に不可能」と批判した。
