(1)李在明(共に民主党)
与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン、57)候補は7日午後から、公共交通で移動しながら市民と交流する過程を自身のYouTubeチャンネルで生中継する「歩いて民心の中に」という選挙活動を始めた。
この日、李候補は約40分間、ソウル市内の地下鉄に乗った。中継の中で市民たちは「新型コロナを早く終息させて欲しい」といった言葉を李候補に投げかけた。中継後、李候補は記者団に対し、「(私を)好きでない人は話しかけてこないため、政治家は(人気があるという)ワナに陥りやすい。錯覚しないように注意する」と明かした。
また、7日午後にはソウル市が運営する「育児カフェ」を訪ねた。この席で李候補は「育児休暇を父親が利用しない場合、夫婦が共に損をするようにし、社会的に父親が育児休暇を利用することを当たり前にすべき」とし、「育児休暇を(男性に)割り当てて義務的に(男女の)比率を合わせる必要がある」と述べた。
8日は、前日7日のイベントで同席した人物の新型コロナ感染が判明し、李候補は濃厚接触者ではなかったものの「先んじて」(選対本部)PCR検査を受け、終日日程をキャンセルした。9日になって陰性が判明し選挙活動を再開している。

(2)尹錫悦(国民の力)
最大野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソギョル、61)候補は7日朝、「地獄鉄」と表現されるほど混雑が激しい地下鉄路線で党舎まで出勤した。その後、首都圏の広域交通網拡大に関する公約を発表した。
尹候補はこの席で、GTXと呼ばれるソウルとソウルを取り囲む形で存在する京畿道(キョンギド、人口1300万人)、仁川(インチョン)市を結ぶ広域急行列車の拡大を主張した。
GTX は既に3路線が確定し、一部では工事が始まり2027年に完工予定となっているが、この3路線のうち2路線を延長し、さらに2路線を新設する案を尹候補は掲げた。
また8日には、ソウル市内の『芸術の殿堂』で行われた韓国の発達障害を持つ芸術家たちの特別展覧会を観覧した。この席で尹候補は「世の中と疎通し自身を知らせる展示をたくさん持ってもらうことが、公正の観点から重要で、この方(発達障害を持つ芸術家たち)たちに対する配慮も、恵みを施すというのではなく、元から持つ幸福追求権から出発する権利だ」と述べた。
一方、8日昼にはソウル市内にある韓国の大型マート『Eマート』で物価をチェックする名目で買い物をした。この際に尹候補は煮干し(ミョルチ)と大豆(コン)を選ぶ写真をインスタグラムに掲載し、それぞれの単語をハッシュタグにした。
こうした投稿に対し与党支持者からは、同マートを経営する韓国の財閥企業『新世界』グループの鄭溶鎮(チョン・ヨンジン、53)副会長が最近になって2度インスタグラムに書き込んだ「滅共(ミョルゴン)」というハッシュタグに倣ったのではないかという指摘が起きた。「滅共」とは韓国で共産主義者(主に北朝鮮を指す)を滅ぼそうというスローガンだ。
尹候補は他にも、Facebookに「女性家族部の廃止」と書き込むなど、20代30代男性に受けの良いフレーズを多用し、本格的に自身のカラーを出し始めている。

(3)沈相奵(正義党)
第二野党・正義党の沈相奵(シム・サンジョン、62)候補は7日午前、市民団体『福祉国家実践連帯』との政策懇談会に出席した。
この場には青年層の社会福祉士も多数出席した。沈候補はこの日、挨拶の中で「韓国は経済指標では世界10位圏の経済大国だが、市民の生活もそうだろか。OECDの指標を見ると(中略)自殺率1位、老人貧困率1位、男女賃金格差1位、重大災害・長時間労働も最高水準、出生率も最低だ」と指摘した上で、「こんな人のいのちが軽い国も先進国なのか、こうやって不平等と差別が放置される国もいったいしっかりした民主国家なのか、子どもを産んで育てるのが大変な国に未来があるのか」と問題を提起し、「この質問に明確に答える大統領になる」と述べた。
そしてその答えを「福祉国家である」とし、自身の福祉公約の双璧として「所得」と「介護」を挙げた。所得に関しては、「基礎生活受給制度(いわゆる生活保護)の死角を無くし最低基準を引き上げる」部分を、介護については「人員の拡大と制度の統一」をそれぞれ公約として掲げた。
また、8日午後には国会議員会館で労働分野の選対委員会の発足式を行った。
この中で沈候補は「正義党の中心価値は労働だ」と明かし、「今回の大統領選の勝利もこの労働選対委の役割にかかっている」と述べた。また、「韓国で1922年に初の労働組合が生まれた」とし、100年目となる今年を指し「労働の大転換が起きる時に根本的な転換が可能になる」と主張した。
その上で、「李在明候補はあたかも労働者の票はすべて自分の票だとでも言わんばかりに、きちんとした(労働分野での)公約ひとつも出していない、尹錫悦候補の口から出る言葉は一つ一つが5年、10年、30年、50年、後退したものだ」と述べ、「私たちがしっかりしなければならない」と奮起を促した。

(4)安哲秀(国民の党)
第三野党・国民の党の安哲秀(アン・チョルス、62)候補は7日から3日間の日程で忠清南北道を訪問している。この地域は伝統的に、大統領選挙のキャスティングボートを握る地域とされ、支持率15%に肉薄するまでに勢いを見せている安候補は、さらなる支持拡大を目指している。
安候補は7日午後には、天安(チョナン)市内にある元日本軍「慰安婦」が眠る墓地「望郷の丘」を訪問した。この席で安候補は、「二度とこんな不幸な歴史が繰り返されない、本当に力のある国を作らなければならないと誓った」と述べた。
また、7日に公開された日刊紙『国民日報』のインタビューで、「私が当選する場合に巨大な政界再編が起きる」とし、「(その時には)国民の党が現在の議席数3の政党ではなくなっている」と見解を述べた。安候補はまた、「私は進歩と保守を分け隔てずに能力のある人々で統合内閣を作る」と主張した。
一方、8日に公開された週刊誌『時事ジャーナル』とのインタビューでは気候危機に関し、「炭素中立(カーボンニュートラル)は人類の未来のための共通の課題だ」とし、このために「2050年まで『原子力35%+再生エネルギー35%+その他30%』という精巧なエネルギーミックスロードマップを作り、履行する」と公約を掲げた。さらに、この際の核心技術として原発を挙げ、「原発のない炭素中立は虚構だ」と主張した。
安候補はまた8日、平澤(ピョンテク)市内で行われた6日の工事現場火災で亡くなった消防士3人の告別式に参加した。なお、この席には文在寅大統領も参加した。

(5)金東兗(新しい波)
新党・新しい波の金東兗(キム・ドンヨン、64)候補は7日、前日6日に殉職した3人の消防士の弔問後に京畿道華城(ファソン)消防署を訪問した。
金候補はこの席で、「とても残念で胸が痛い。お通夜の席で数年前に長男を亡くした話をすると、遺家族が手を握り『私の気持ちが分かるのですね』とおっしゃった」と心情を明かした。また、現場の声を聞く懇談会を持ち、▲人員の増員、▲完全な国家公務員になるための人事権と予算権の確保、▲消防士の心理的な健康支援のための施設確保(現在はゼロ)といった改善案を掲げた。
また、8日午後にはソウル市内の若者が集まる街、弘益大学前を訪れ、若者支持者たちと交流した。金候補はこの日を振り返りながら、自身のFacebookに「既得権共和国である韓国を機会の共和国に変える」として、「青年達が『働く機会、学ぶ機会、商売をする機会、事業をする機会、愛する機会、恋愛する機会、結婚する機会』を充分に持てるようにする」と持論を述べた。
