「南北は対話を模索せよ」、文在寅前大統領が『10.4宣言』15周年を受け談話発表
「南北は対話を模索せよ」、文在寅前大統領が『10.4宣言』15周年を受け談話発表
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2022.10.05 12:03
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5年ぶりに北朝鮮が日本上空を横断するミサイル発射実験を行った10月4日は、いみじくも過去に南北首脳会談が開かれた日だった。節目の15年を迎え、韓国の文在寅前大統領が南北双方に自制を求めるメッセージを発信した。
2018年4月27日、板門店で南北首脳会談を行った文在寅大統領(当時)と金正恩国務委員長。写真は共同取材団。
2018年4月27日、板門店で南北首脳会談を行った文在寅大統領(当時)と金正恩国務委員長。写真は共同取材団。

4日午前7時半過ぎ、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)はミサイル発射実験を行った。北部・慈江道(チャガンド)舞坪里(ムピョンリ)から東側に向け発射された弾道ミサイルは日本列島のはるか上空(最高高度約970キロ)を横断し、太平洋に着弾した。

この過程で日本では「Jアラート」が作動し、一部の地域では電車が止まるといった影響が出た。

一方、韓国でもミサイル発射のニュースは大きく報じられた。尹錫悦大統領も大統領府への出勤時に行う略式会見の場で「(北朝鮮による)こんな無謀な核による挑発は、わが軍をはじめ同盟国と国際社会の決然とした対応に直面するだろう」と語気を強めた。

このように緊張が高まる中、文在寅前大統領はツイッターに短い談話形式をメッセージを投稿した。
 


文氏は10月4日が『10.4南北共同宣言』から15周年であることを喚起し、北朝鮮に対しては「ミサイルによる挑発を中断し、モラトリアムの約束を守るべき」と語りりかける一方、「南北韓双方がこれ以上、状況を悪化させることを止め、対話を模索することを促す」とし、一歩も引き下がらない韓国の尹政権を暗に批判した。

なお、『10.4南北共同宣言』とは2007年に平壌で韓国の故盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日国防委員長が南北首脳会談を行った際に合意されたものだ。

2000年の史上初の南北首脳会談で発表された『6.15共同宣言』に基づき、南北関係を相互尊重と信頼関係に転換し、軍事的な敵対関係を終息させることを言明した上で、南北間でより広範な経済協力を行っていくというものだった。

今回の文大統領の談話は、金正恩・尹錫悦という南北の両指導者に『10.4南北共同宣言』の理解を促すことで、南北双方が最新鋭の武器を披露する軍備拡張が続き、緊張が高まり続ける状況の「管理」を求めるものといえる。

だが、尹政権は北朝鮮を「主敵」とする姿勢を明確にしており、金正恩氏もまた22年9月に『核教理(ドクトリン)』を改定し、核兵器の先制使用対象に韓国を含めるなど、双方の対決姿勢はとどまることを知らないのが現実だ。

以下は文在寅前大統領の談話全文。

今日は10.4共同宣言15周年です。
南北首脳は10.4宣言を通じ、南北関係と平和繁栄という大胆な構想を明かしました。

恒久的な平和体制と繁栄の経済共同体となるための具体的で実践可能な約束でした。
残念ながら、その精神は次の政府(訳注:李明博政権)につながりませんでした。

しかし韓半島の平和と相生繁栄の道は放棄することのできない夢でした。
10.4宣言の精神はふたたび4.27板門店宣言と、9.19平壌共同宣言として蘇り、もう一歩の前進を成し遂げました。

今ふたたび、韓半島の状況がとても不安になっています。
揺れ動く世界秩序の中で、周辺の強大国の角逐が深まっており、南北間の対話の断絶も長引いています。

しかし、ふたたび始めなければなりません。
韓半島の運命の主役は私たちです。

周辺の強大国に依存し従属するのではなく、徹底して国益と平和の価値を優先し、南北関係を復元していかなければなりません。

韓半島を中心に東北アジアとアジア、さらに世界の平和と繁栄の道を構想した10.4共同宣言の遠大な抱負を南北韓がふたたび思い起こさなくてはなりません。

北韓はミサイルによる挑発を中断し、モラトリアムの約束を守るべきです。

南北韓双方がこれ以上、状況を悪化させることを止め、対話を模索することを促します。

盧武鉉大統領が陸路で禁断の線を越え北側の地を踏んだあの日の感激を記憶します。
10.4共同宣言の精神を蘇らせ、共存共生と平和繁栄へと動揺せず進むことを期待します。