「北朝鮮が対話に復帰するよう最大限の圧迫を」日米韓首脳が共同声明、中露へのけん制も
「北朝鮮が対話に復帰するよう最大限の圧迫を」日米韓首脳が共同声明、中露へのけん制も
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2017.07.09 18:00
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G20(主要20か国)サミットのためドイツ・ハンブルクを訪れている日米韓の三か国首脳が会談を行い、共同声明を発表した。テーマは北朝鮮の核とミサイル。声明で三か国首脳たちは「北朝鮮の核武装を容認しない」ことを言明し、「北朝鮮の非核化を平和的な方法で達成するために共調することが重要」と確認した。また、中露を含む国際社会に対し「北朝鮮との経済的関係の縮小」などによる強い措置を促した。会談の内容をまとめる。(ソウル=徐台教)

会談のほとんどは北朝鮮問題

日本の外務省によると、晩餐を兼ねた会談は現地時間7月6日の夜7時35分から、75分にわたって行われた。会談後すぐに、現地で記者会見を行った会談参加者の一人、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は「協議は虚心坦懐に行われた」と語った。

日米韓首脳会談に際し、記念撮影を行う三か国首脳。この日の会談は在ハンブルク米国総領事館で行われた。写真は青瓦台提供。
日米韓首脳会談に際し、記念撮影を行う三か国首脳。この日の会談は在ハンブルク米国総領事館で行われた。写真は青瓦台提供。

この日の会談には、日本からは安倍晋三首相、野上浩太郎官房副長官、谷内正太郎国家安全保障会議(NSC)局長、秋葉剛男外交審議官が、米国からはドナルド・トランプ大統領、レックス・ティラーソン国務長官、スティーブン・ムニューシン財務長官、ハーバート・マクマスター安全保障担当補佐官が、韓国からは文在寅(ムン・ジェイン)大統領、金東兗(キム・ドンヨン)経済副総理、康京和外交部長官が参加した。

康長官によると「会談の大部分を北朝鮮の核と諸問題に割いた」という。これには、7月4日の北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験が大きな影響を与えたことは間違いない。声明でも「前例がない」と評した北朝鮮の挑発を前に、三か国は「緊密な共調意志を確固とした」という。

このように、会談後に発表された日米韓共同声明の内容は全て、北朝鮮の核問題についてのものとなっている。三か国の共調自体を強固にし、それを軸に国際社会への協促していくという図式だ。

米韓合意を日本と共有

三段落でなる声明ではまず、「国連安保理決議を正面から違反し」ICBM発射実験を行った北朝鮮を糾弾した。

続けて三か国の首脳が、「北朝鮮が態度を変え、挑発的で驚異的な行動を自制し、非核化のために真摯な対話に復帰するよう最大限の圧迫を持続的に加えていくよう協力していくこと」を確認した。

康長官によると、会談における文在寅大統領の様子も記者団に明かした。「米韓首脳会談の結果を土台に、韓国政府による制裁と対話などあらゆる手段を活用する、段階的で包括的な非核化構想を説明した」とのことだ。

こうした流れ中で、「北朝鮮が正しい道を選ぶ場合、国際社会と共に北朝鮮により明るい未来を提供する準備ができている」ことと共に、「北朝鮮の核武装を容認しない」ことも声明には明記された。

北朝鮮と国境を接した国家=中国、ロシア

また、その上で三か国が「追加制裁を含む新しい国連安保理決議を早急に採択」し、「国際社会が迅速かつ徹底して全ての安保理決議を履行していくことと、北朝鮮との経済的関係を縮小する措置を採ること」を促した。

特筆すべきは同じ段落で、「北朝鮮と国境を接した国家」に対し「北朝鮮が現在の驚異的で挑発的な道を放棄し、今すぐ非核化措置を執ることと弾道ミサイルプログラムを中断するよう」、「より積極的な説得努力を傾けることを促した」という点だ。

韓国の日刊紙・中央日報によると韓国外交部の関係者はこの表現について「中国とロシアを直接名指ししないための表現」と同紙に説明したという。

安倍首相は拉致問題への言及も

声明の最終部分では、北朝鮮への抑止力についても言及された。

「三か国間の安保協力を持続的に発展」させ、日本と韓国に対しては「米国が保有した全ての範疇の在来式および核の力を活用する鋼のような防衛公約」を再確認したと明記された。

安倍首相と握手する韓国の文在寅大統領。初めての顔合わせだった。写真は青瓦台提供。
安倍首相と握手する韓国の文在寅大統領。初めての顔合わせだった。写真は青瓦台提供。

会談の様子については、日本の外務省も詳しい。特に安倍首相が会談の冒頭から「国際社会の最優先事項は北朝鮮問題」と切り出し、この日の首脳会談について「日米韓で北朝鮮の核の放棄に向けた戦略を共有する上で歴史的な機会」としたという。

さらに「三首脳で国際社会の取組を主導していきたい,安全保障分野をはじめとする幅広い分野において日韓・日米韓の未来志向の協力関係を進展させていきたい」と述べたとのことだ。また、拉致問題に関する理解と協力を求め、米韓首脳から支持を得たとまとめた。

そして、韓国側の記者会見では語られなかった「米国が中国の企業等への制裁を科したことにつき日韓も米国と連携していくこと」もこの日の合意に含まれているとした。

総評:米国にとって「一石二鳥」の共同声明

見てきたように、共同声明の内容は国際社会にも向けられており、単純な北朝鮮への圧迫にとどまらない。とはいえ、4日のICBM発射実験が無ければ、おそらく共同声明も無かっただろう。

八度目となる日米韓三か国の首脳会談ではじめて発表された共同声明は、北朝鮮に対する圧力をかけ、中露に対するけん制をも行うという「一石二鳥」の効果を狙った、米国の意図が見え隠れするものであった。

今後、日米韓の課題は、北朝鮮への「最大限の圧迫」について留保的な態度を取る中国とロシアを、いかに同調させることができるかになる。

だが、韓国が「朝中露」対「日米韓」という「新冷戦」となる対立構造を望んでいるとは思えない。

韓国は北朝鮮と対話や支援を行う「良い警察」の役割と、制裁・圧迫を行う「悪い警察」の役割がうまく回り、最大の効果を出す潤滑油になりたいはずだ。

そのためには今後、より一層の外交努力を続ける必要がある。これまで本紙で繰り返してきた通り、文在寅政権の北朝鮮政策と外交はまだ始まったばかりだ。

この日の会談は日本との関係を多少ながらも回復し、中国、ロシアとの今後の「取引」に臨む下準備を進めた点で、韓国側としては評価できるだろう。