G20(主要20か国)サミットが行われていたドイツ・ハンブルクで、安倍晋三首相と文在寅大統領による日韓首脳会談が開かれた。短い時間の会談だったが、両首脳はシャトル外交の復活など日韓の関係発展について前向きな姿勢を表明した。会談の結果をまとめる。(ソウル=徐台教)
会談は約2年ぶり 「シャトル外交」を復元
会談は、晩餐を兼ねた日米韓三か国首脳会談が行われた翌日の、現地時間7月7日朝9時40分頃から36分間行われた。
出席者も大きく変わらず、日本からは野上浩太郎官房副長官、谷内正太郎国家安全保障会議(NSC)局長などが、韓国からは金東兗(キム・ドンヨン)経済副総理、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官などが参加した。

会談の冒頭では、安倍首相が「文大統領と共に未来志向の新たな日韓関係を構築していきたい」とし、「政治、安保、経済、文化などあらゆる分野で交流や協力を発展させたい」と表明した。
また、文大統領は「日韓両国は基本的な価値と戦略的な利益を共有するばかりか、地理的にも文化的にも最も近い親友」と語り、「未来志向的な成熟した協力同伴者関係を構築するために協力していくことを望む」と積極的な姿勢を見せた。
安倍首相もこれに対し「首脳レベルでの緊密な疎通を土台に、共に協力していきたい」と応えた。両首脳はさらに、互いに相手国を行き来する「シャトル外交」を復元することにした。
来年2月に韓国・平昌で日中韓首脳会談か
日韓の首脳が最後に単独で会談を行ったのは2015年11月。当時、日中韓首脳会談のためソウルを訪れた安倍総理が朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談を行った。約20か月ぶりとなる今回の会談もG20サミットの「ついで」に行われたが、両首脳は互いを招待した。
安倍首相は文大統領に対し「早期の訪日を希望する」一方、文大統領は安倍首相に「平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック時の訪韓」を要請した。両首脳はさらに「日中韓三か国首脳会議の早期開催」に向け協力することにした。
先日の中韓首脳会談の席で、文大統領は中国の習近平国家主席をやはり平昌冬季オリンピックに招待しており、日中首脳の訪韓が重なる場合、2015年11月以降中断している日中韓首脳会談が再開する可能性がある。
2015年12月の「慰安婦合意」には互いに慎重
この日の会談では、日韓両国の懸案となっている「慰安婦合意」についての言及もあった。
文大統領は「日韓関係をこれ以上近づかせないよう塞いでいる『何か』がある」と表現し、「(慰安婦合意を)韓国の国民の大多数が情緒的に受け入れていない現実」を認めながらも、「両国が共同で努力し、賢く解決することと、この問題が日韓両国の別の関係発展の妨げとなってはならない」点を明らかにした。

一方の安倍首相は「日韓両国は隣国であるがゆえに難しい問題があるのも事実」としながらも、「難しい問題が全体の日韓関係に悪影響を及ぼさないよう適切にマネージすることが日韓両国共通の利益である」とした。
お互い、現時点でこれ以上の「深入り」は避けた格好だ。韓国メディアでは、康京和外交部長官が任官直後の6月末に、「日韓慰安婦合意」の合意過程に対する「検証」を指示したとされる。
「対話の時期か否か」北朝鮮情勢の判断めぐって異見
前日の日米韓首脳会談に続き、北朝鮮の核・ミサイル問題も議題に上がった。核・ミサイル能力の高度化が日韓両国にとって「厳重な脅威である」点で認識を共にし、「北朝鮮の核問題解決に最優先の順位を付与」するとした。
その上で安倍首相は日韓、日米韓の緊密な連携を強調しつつ、「今は最大限の圧力をかけることが必要であり,対話の時ではない」との見方を示した。
他方、文大統領は「朝鮮半島の平和統一のための条件造成のための、韓国側の主導的な役割と南北対話の復元の必要性」について語り、これについて安倍首相も「理解」を示した。
総評:約2年の空白を埋めた会談 細部はこれから
この日の会談は約35分と短いもので、いずれの話題に対しても深く立ち入ることはなかった。約2年の間、断絶していた日韓首脳外交が復元される第一歩を踏み出したことで評価されるべきだろう。韓国側は特に安倍首相と文大統領が「良い雰囲気」の中で対話したことを強調している。懸案は少なくないが、今後に期待したい。
一つ、筆者が気になったのは、「制裁と対話」を並行し現在の北朝鮮情勢を動かしたい韓国と、制裁一辺倒の従来通りの対応を主張する日本との温度差だった。日本も韓国もここ数年、極めて限定的な範囲でのみ北朝鮮との対話・交流を行ってきており、韓国のように突然「制裁と対話」にシフトするのは簡単ではないだろう。
もっとも、韓国側が強調する「朝鮮半島問題における韓国の主導的な役割」というのは、6月末の米韓首脳会談で米国側の同意を得てはじめて国際的な「パワー」を持った概念にすぎず、対話・南北交流再開以外の具体性が見えていないのも事実だ。
韓国側は今後、一連の利害関係国との外交の中で得た国際的な「お墨付き」を背景に、あらゆるチャネルで北朝鮮との接触を粘り強く図ると見られる。その過程で日韓の視点の違いもある程度埋まっていくことだろう。それに合わせる形で、日本側も北朝鮮とのチャネルを活性化させてもいいかもしれない。